戦車の終焉? ナゴルノカラバフ紛争でドローンが戦車を大量破壊

停戦後撤退するアルメニア軍(11月13日)|Dmitri Lovetsky / AP Photo

◆戦車の終焉か? 誇張か?
 ナゴルノカラバフの戦闘におけるドローンの戦果を見るに、近代兵器の優位性は火を見るより明らかだ。ドローンが圧倒的に優位な近代の戦場では、戦車はもはや人命にとって危険な場所となっており、今後活躍の場がなくなってゆくとの見方が広がりつつある。しかし米フォーリン・ポリシー誌は、そのような見方は誤りであると警鐘を鳴らす。戦場を支配する三要素は「訓練経験」「地形」「戦術」であり、新兵器がただちに戦車に勝るというのはありがちな思い違いだという。アゼルバイジャン側は大量の戦車をドローンで撃破したと発表しているが、両陣営が発表する数は明らかに過大であり、この数を鵜呑みにすべきではないと指摘。また、植生のない乾燥した戦場は戦車が苦手とする地形であり、あくまで状況が戦車に不利であったためだと同誌は見ている。さらに現場の動画から推察するに、アルメニア側の戦術が素人レベルであったことも被害の拡大につながったようだ。

 タイムズ紙も同じく、ドローンが戦車を駆逐すると一様に言い切ることはできないとの立場だ。対ドローン用のレーザー防衛システムなどが発達しつつあるが、今回アルメニア側にはドローンを想定した多層の防衛システムが存在しなかった。また、とくに今回のような小国同士の紛争においては、いまだに戦車や戦闘機の物量が物を言うと記事は指摘する。戦車を軽視して配備の全体数を減らせば、1両の損失が命取りとなるためだ。

 ドローンの華々しい活躍により「戦車の終焉」がささやかれている一方で、今回の紛争の特殊な状況に導かれた限定的な戦果との見方もあるようだ。

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Text by 青葉やまと