尖閣諸島奪取後の中国の行動とは?

南シナ海で軍事演習を行うフリゲート艦「運城」(2016年7月8日)|Zha Chunming / Xinhua via AP

 つまり、中国は尖閣諸島を単に占有するだけではなく、そこを軍事拠点化する狙いがある。南シナ海の南沙諸島や西沙諸島では、軍用滑走路の建設など中国による軍事拠点化が一方的に進んでいるが、中国には「尖閣諸島の南シナ海化」を押し進め、そこを拠点に米国や日本をけん制するだけでなく、台湾侵攻や西太平洋進出のための最前線基地にする戦略がある。中国にとってもユーラシア大陸からできるだけ離れた場所に軍事拠点を設置できれば、それに越したことはない。

 台湾は8月、2021年の防衛費を今年から10.2パーセント増額することを発表したが、これは台湾への軍事的圧力を強める中国を念頭に置いたものである。中国人民解放軍の東部戦区も同月、中国大陸と台湾の間にある台湾海峡やその周辺で軍事演習を数回にわたって実施したと明らかにしたが、尖閣諸島の南シナ海化が実現すれば、台湾は西や南からだけでなく、北からも中国の軍事的脅威に直面することになる。また、尖閣諸島で衝突が発生した場合、日米はそちらに時間を割かれることになり、中国がその隙をついて台湾海峡で軍事的攻勢を強めることも懸念されている。

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Text by 和田大樹