越境するイスラム過激派 アフリカ・サヘル地域でテロ激化

米特殊部隊による軍事訓練(ブルキナファソ、2019年2月27日)|U.S. Diplomatic Security Service / flickr

 また、こういったイスラム過激派は、マリやブルキナファソ、ニジェールの周辺諸国に越境することが懸念されている。たとえば、ブルキナファソとの国境地帯にあるコートジボワールの町カフォロでは今年6月、ブルキナファソから越境したイスラム過激派とみられる武装集団がコートジボワール軍を襲撃し、兵士14人が殺害された。コートジボワール政府は7月、サヘル地域のテロ情勢が悪化していることを受け、ブルキナファソとの国境地帯に兵力を増強し、特別軍事区域を設置した。

 また、ブルキナファソと北部で国境を接するトーゴでは今年初め、ブルキナファソから越境してきたとみられるイスラム過激派のメンバー100人あまりがトーゴ当局に拘束された。コートジボワールやガーナ、ベナンやトーゴのギニア沿岸国は、ISGSやJNIMの南下を強く警戒している。

◆ナイジェリア北西部も要注意か?
 しかし、脅威はそれだけではない。米アフリカ軍は今年8月、ISGSやJNIMなどが南進し、ナイジェリア北西部に勢力を拡大する恐れがあると指摘した。ナイジェリア北西部へ勢力を拡大するとなれば、ニジェールの首都ニアメー(Niamey)がある同国南西部を通過することになるが、ニアメー近郊では8月、フランス人のNGO職員6人を含む8が武装勢力に殺害される事件があった。ナイジェリア北西部とサヘル地帯を繋ぐテロの脅威は一部で指摘されてきたが、ナイジェリアでは北東部などではボコハラムや「ISの西アフリカ州」などのイスラム過激派が活発に活動しており、サヘル地域から越境するイスラム過激派がナイジェリアで勢力を拡大できる土壌は存在する。

 アジアや中東、欧米と比較すると、アフリカの治安情勢が報道されることは少ない。しかし、ISの支配地域が中東でなくなったとしても、アフリカではそれに関連する活動が活発化している。

Text by 和田大樹