越境するイスラム過激派 アフリカ・サヘル地域でテロ激化

米特殊部隊による軍事訓練(ブルキナファソ、2019年2月27日)|U.S. Diplomatic Security Service / flickr

 イスラム国(IS)やアルカイダなどジハード主義組織の弱体化が進み、近年テロリズム研究の世界では、国境を越える暴力的な白人至上主義のテロに関する研究や分析が盛んになっている。確かにISの支配領域が崩壊してから1年以上となるが、アフリカのサヘル地域周辺ではISやアルカイダを支持する武装勢力によるテロが近年激化しており、その動静から目が離せない。

◆統計上も増加するテロ事件
 アフリカ地域を専門とする研究機関「Africa Center for Strategic Studies(ACSS)」は7月、最新の統計結果を発表した。同機関によると、アフリカ全体において、今年6月までの1年間でイスラム過激派によるテロ事件が4161件発生し、前年同期比で31パーセント増加したという。2011年以降、初めて総数が4千件を超えた。この統計では、イスラム過激派が活動する地域を北アフリカ、サヘル地域、チャド湖周辺、ソマリア、モザンビークの5つに分けているが、うち北アフリカを除く4地域で前年からテロ事件が増加傾向にあることがわかった。とくに、近年はサヘル地域のブルキナファソとモザンビークで顕著に増加傾向にある。

◆脅威がサヘル地域からギニア湾沿岸へ
 サヘル地域のマリやブルキナファソ、ニジェールでは近年、イスラム国を支持する「大サハラのイスラム国(ISGS)」や、アルカイダを支持する「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」などのイスラム過激派による村や軍基地、キリスト教会を標的としたテロ事件が増加傾向にあるだけでなく、1回のテロ事件における死傷者数が数十、数百に上ることも珍しくない。とくに、ブルキナファソではここ数年でマリから越境してきたISGSやJNIMによるテロ事件が深刻化している。

Text by 和田大樹