尖閣海域で中国が海洋活動を強化している背景
◆米大統領選の行方を注視する中国
もう一つは、一つ目と関連するが、11月の米大統領選挙の行方だ。現在、新型コロナウイルスの影響で、トランプ大統領もバイデン候補も支持者を集めた政治集会を開けず、十分な選挙戦ができていないが、これまでのところバイデン候補がトランプ大統領を10%前後の支持率でリードする展開となっている。現在の状況では、どちらが大統領になっても中国へは厳しい姿勢を貫くことになりそうだが、中国は経済的に疲弊する米国、また白人警察官による黒人男性暴行死事件をきっかけとした反人種差別デモ・暴動で混乱する米国の姿を観察し、全体として、米国がいまどれほど混乱下にあるかを逐次チェックしていることだろう。中国が対外的行動を取る場合、米国内の混乱度も重要なバロメーターになっている。
尖閣問題において、日本の相手は中国だが、中国にとっての本当の相手は日本ではなく米国である。日本が防衛政策で混乱していても、米国のそれが安定していれば、中国としても尖閣諸島海域で緊張を煽る行動は取りにくい。
2013年6月、新たな中国の指導者となった習近平氏が米国を訪問し、当時のオバマ大統領に「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と伝えたことがあるが、西太平洋で影響力を高めたい中国にとって、日本列島を通過することは避けられない。よって、中国が太平洋への野望を捨てない限り、尖閣諸島や東シナ海での緊張は続くことになる。
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