尖閣海域で中国が海洋活動を強化している背景

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 新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、中国による海洋覇権拡張の動きに拍車がかかっている。最近になって、中国が尖閣諸島周辺の海域での日本漁船の操業は領海侵犯にあたるとして、日本政府に対し同海域に立ち入らせないよう要求していたことが明らかになった。中国がこのように要求するのは異例だ。また、尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域では、中国海警の船舶による航行が毎日のように目撃されているが、7月21日も同船舶4隻の航行が確認され、これで99日連続となる。2012年の日本による尖閣国有化宣言以降、最多を記録し続けている。なぜ、最近になって中国は尖閣諸島周辺での活動を強化しているのだろうか。

◆コロナ禍の政治的隙を利用する中国
 一つはコロナ危機で生じた政治的隙だ。新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、中国は香港国家安全維持法の導入を強行し、それをめぐって米国やオーストラリアなどとの緊張が高まり、中印国境での衝突では45年ぶりに死者が出る事態となった。要は、尖閣のケースもそのなかの一つであり、南シナ海や中印国境で生じていることは別の場所で起こっている問題だが、それらは政治的には連動したものである。

 そして、新型コロナウイルスは米国に最も被害を与え、感染者が全米で300万人を超えるだけでなく、在沖米軍内でも感染が拡大し、同軍の活動に影響が出ることも懸念される。実際、中国の東シナ海での活動において最も大きな障害になるのは在沖米軍の存在であり、そこで在沖米軍の日常活動に大きな支障が出るならば、中国がその政治的隙を突いて行動を試すことは想像に難くない。今年春にも、米海軍空母「セオドア・ルーズベルト」で新型コロナウイルスの集団感染が発生した。

Text by 和田大樹