中国にとっての小笠原諸島の地政学的意味とは
◆中国にとっての小笠原諸島の地政学的意味とは
では、中国にとって小笠原諸島はどのような戦略的意味があるのか。まず、尖閣諸島や台湾、南シナ海と違って、小笠原諸島周辺はそれほど政治紛争化していない。2013年6月、習近平氏は米国を訪問し、当時のオバマ大統領に、「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と伝えたことがある。これは太平洋分割統治論とも呼ばれるが、ハワイより東を米国が、西を中国が統治するという考え方だ。太平洋へ影響力を拡大したい中国からすれば、人口が非常に少なく、政治紛争化していない太平洋に浮かぶ小笠原諸島は地政学的にも都合が良い。
また、小笠原諸島は伊豆半島からグアム、パプアニューギニアにいたる第2列島線上に位置する。中国の戦略のなかには、第2列島戦をさらに遠方に展開した、ハワイからサモアを通り、ニュージーランドにいたる第3列島線もあるが、今後太平洋で米国と対峙していくためには、第1列島戦の内側だけでなく、第2列島戦や第3列島戦などにも紛争拠点を分散化させていきたい狙いも想像できる。
◆小笠原諸島と状況が似ている南太平洋島嶼国
小笠原諸島と状況が似ているのが、南太平洋島嶼国だ。南太平洋島嶼国周辺も政治紛争化しておらず、人口も非常に少なく、第2列島線と第3列島線に跨がり、太平洋上に浮かんでいる。中国にとっての地政学的重要性は似ている。オーストラリア・シドニーに拠点を置くローウィ研究所(Lowy Institute)によると、中国は2006年からの10年間で、パプアニューギニアに6億3200万ドル、フィジーに3億6000万ドル、バヌアツに2億4400万ドル、サモアに2億3000万ドル、トンガに1億7200万ドルなど莫大な資金援助を行い、南太平洋地域での影響力を高めようとし、近年はオーストラリアやフランスが中国への懸念を強めている。日本の小笠原諸島が南太平洋島嶼国のようになることはないが、類似している点を鑑み、日本は小笠原諸島の離島防衛を強化していくべきだろう。
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