アルカイダは本当に衰退したのか?

Magharebia / Wikimedia Commons

◆中東だけでなく、アフリカでも
 フランスのパルリ国防大臣は6月5日、マリ北部で行った空爆の結果、マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)の指導者アブデルマレク・ドルクデル容疑者を殺害したと発表した。ドルクデル容疑者はアフガンのソ連侵攻時代にムジャヒディンとして戦った経験があり、オサマ・ビンラディンやザワヒリなどアルカイダ幹部とも繋がりがある。AQIMは2007年にアルジェリアで台頭し、同国南部やマリなどサヘル地域に活動領域を拡大させ、広域的なネットワークを維持している。また、アンサール・ディンや西アフリカ統一聖戦運動(MUJAO)、AQIMの一部などが合併して2017年に誕生したアルカイダ系組織「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」は、マリやニジェール、ブルキナファソなどで近年テロを活発化させるだけでなく、ガーナやトーゴ、ベナンやコートジボワールなどギニア湾沿岸諸国にまで勢力を拡大することが懸念されている。

 現に、ブルキナファソとの国境にあるコートジボワール北東部カフォロ(Kafolo)で6月11日未明、イスラム過激派とみられる集団がコートジボワール軍を襲撃し、少なくとも兵士11人が死亡、6人が負傷した。犯行声明などは出ていないが、ブルキナファソでテロ攻撃を活発化させている「イスラム国(IS)」、またはアルカイダを支持するイスラム過激派の犯行が疑われている。コートジボワールでは2016年3月、AQIMが南東部グランバッサムにあるリゾートホテルを襲撃。欧米人など16人以上が犠牲となった。サハラ地域では、IS勢力よりアルカイダ勢力のほうが勢力を強く維持している。
 
◆今後の情勢
 アルカイダが米国主導の対テロ戦争によって組織的に弱体化し、近年はイスラム国の陰に隠れる存在になったことは事実である。現在も声明を出し続けているが、昔のように勢いがあるわけではない。しかし、アルカイダの名前は依然として残っており、各地の武装勢力はそれに忠誠を誓っている。

 そして、新型コロナウイルスの影響で、失業や経済格差などが中東アフリカ諸国で深刻となり、現地の若者たちの不満がいっそう広がると、そういった若者たちがテロ組織の受け皿となり、いっそうテロの世界に入ってしまう恐れがある。テロの問題を多角的に考え、中長期的にみると、アルカイダの盛り返しというものは米国の安全保障にとって再び厄介な問題になる恐れがある。

Text by 和田大樹