アルカイダは本当に衰退したのか?

Magharebia / Wikimedia Commons

 すでにイスラム国(IS)の支配地域はシリア・イラクで崩壊し、ISの脅威は幸いにも陰りが見えている。そして、それより影が薄いと思われているのがアルカイダである。両者とも、以前ほどの組織力、発信力は持っておらず、衰退の一文字で片付けられるのかもしれない。しかし、テロ組織とは分裂や合併、衰退や再生を繰り返し、名前を変えて活動を続けることもある。そして、「組織的」に弱体化した両者とも回数は激減しているがネットでの発信は続け、戦闘を続ける意思は依然と変わっておらず、その求心力は残っている。
 
 そのようななか、米国は駐留イラク米軍を縮小するなど、対テロ戦争からの撤退を着実に進めている。

◆多国籍集団としてのアルカイダ
 シリア北西部イドリブ県で6月14日、米軍による空爆があり、同県を拠点とするアルカイダ系のイスラム過激派組織「フッラース・アル・ディーン(Hurras al-Deen)」の幹部2人が殺害された。フッラース・アル・ディーンは、イドリブ県で活動するイスラム過激派組織「タハリール・アル・シャーム機構(HTS)」から分派したメンバーで2018年2月に台頭した組織だが、アルカイダへの忠誠心が非常に強い組織である。そして、この空爆で殺害された幹部2人はヨルダン人とイエメン人で、とくにヨルダン人の幹部は、2003年のイラク戦争以降同国でテロを繰り返したイラクのアルカイダ(AQI)のザルカウィ指導者(2006年6月死亡)と非常に近い関係にあった。フッラース・アル・ディーンは1500〜2000人規模の戦闘員を有すると言われるが、ポイントとなるのはその約半数が外国人とみられることである。9.11同時多発テロを実行したアルカイダは、いまでもアフガニスタン東部に拠点があり、一定の勢力を維持しているが、エジプト出身のザワヒリ指導者、サウジアラビア出身の故オサマ・ビンラディンなど組織内が多国籍なのが特徴で、これはフッラース・アル・ディーンも非常に似ている。そして、イスラム国にも数万人の外国人が流れ込んだように、テロ組織の国際性は各国の対応を難しくさせる場合が多い。

Text by 和田大樹