中国の内海化戦略は活発化するのか コロナも利用する長期ビジョン

中国海軍の空母「遼寧」|Baycrest / Wikimedia Commons

◆中国が内海としたい東シナ海
 一方、中国のこの動きは東シナ海でも同様である。3月に西太平洋地域で活動する米国の原子力空母「セオドア・ルーズベルト」の艦内で新型コロナウイルスの集団感染が発生し、現在も活動や任務が停止状態となっている。その後、4月、中国の空母「遼寧」を中心とする部隊が沖縄本島と宮古島の間を2回も航行し、航空自衛隊も約20日間にわたってスクラングル発進する事態となった。

 また、5月には、日本の領海である沖縄尖閣諸島周辺で、中国海警局の船が与那国島所属の漁船を一定期間にわたって追尾する事件が発生した。中国側は、日本の漁船が不法操業をしていたとして、中国の警察権を行使したと主張しているというが、中国側のこういった認識からは、いずれは大規模な偶発的衝突が発生する危険性を我々に想像させる。米軍も、世界有数の性能を誇るB-1B爆撃機やイージス艦を東シナ海や台湾海峡に派遣するなどして中国の動きをけん制している。

◆キーポイントは「政治的隙」
 中国側も、米国との衝突はできるだけ避けながら海洋覇権の拡大を進めたい。また、中国側もいまの時点で米国に敵わないことは十分に承知しており、中長期的ビジョンで海洋進出を押し進めている。よって、中国側は、今回のような政治的隙を突けるときは突き、徐々に米国に迫るという戦略をとる。経済力や軍事力で米中は拮抗してきている。それは中国にとって悪くない。後は、政治力でどう対抗し、追い抜くかであろう。

Text by 和田大樹