米軍と武装勢力が報復合戦 依然として続く米イラン危機

米国大使館などがあるイラク首都バグダッドの「グリーンゾーン」に17日、ロケット弾が直撃|Khalid Mohammed / AP Photo

◆最近の情勢分析
 以上のように、今月だけでも複数の報復合戦が展開されている。現在、トランプ政権は新型コロナウイルスの感染拡大への対応や、打撃を受ける経済動向に追われ、この問題に本格的に時間を割くことができない状況にある。

 3月11日の事件を深く考えてみたい。上述の通り、同日は亡くなったソレイマニ司令官の63歳の誕生日だった。ソレイマニ司令官はイラン革命防衛隊の先鋭工作部隊「コッズ部隊」のトップで、イラクなどで活動するシーア派武装勢力の司令塔だった。大統領候補にも名前があがるなど、関係者のなかではカリスマ的存在だった。同司令官の誕生日に米軍への攻撃があったということは、それだけソレイマニ司令官とシーア派武装勢力が密接な関係にあったと捉えるべきだろう。

 しかも、対米である程度自制するイラン政府と違い、イラクで活動する複数のシーア派武装勢力は現地で自由に活動し、現地のシーア派の若者を積極的にリクルートしている。反対に、イラクの少数派であるスンニ派やクルド勢力のなかには、イランの影響力が高まることへの懸念もあり、米軍の関与を望む声も根強い。イラクでは今後も現在のような状況が続くことだろう。

◆中国やロシアはどう関与してくるか
 一方、今後のイラクをめぐっては、中国やロシアがいかに絡んでくるかも注目される。ロシアはイランやシリアのアサド政権を長年支持しており、イラク国内の動向においてはイラン側に立つことは想像に難くない。

 また、去年、イラクのアブドルマハディ首相(当時)が北京で習近平主席と会談し、一帯一路に参加することを表明した。今後、中国の経済的浸透がイラク国内で高まり、イラクをめぐる覇権争いはいっそう顕著になる可能性がある。

Text by 和田大樹