米軍と武装勢力が報復合戦 依然として続く米イラン危機
いま世界は新型コロナウイルスと戦っている。今年始めに世界に衝撃を与えた米イラン危機の動向は現在、あまり耳にすることはない。だが、米イラン危機はひとまず衝突は回避されたものの、依然として緊張は続き、イラクは米イラン対立の最前線のままである。
◆米軍とシーア派武装勢力の報復合戦
イラク・バグダッド北郊にある米軍駐留基地に3月11日、ロケット弾15発以上が撃ち込まれ、米兵2人と英兵1人が死亡し、少なくとも12人が負傷した。犯行声明は出ておらず、米軍幹部は、現在のイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」にこれほどの攻撃をする能力はないとし、イラクを拠点とする親イランのシーア派武装勢力「カタイブ・ヒズボラ(KH)」による犯行を指摘した。ちなみに11日は、1月初旬に殺害されたイラン革命防衛隊・ソレイマニ司令官の63歳の誕生日だった。
その翌日、米軍は、イラク南部にあるKHの拠点5ヶ所に向けて空爆を実施した。米国防総省は、緊張をさらに高めない程度に「限定的な」報復を行ったと発表したが、秋の大統領選挙もあり、イランとのさらなる関係悪化をできるだけ避けたいというトランプ政権の思惑が見て取れる。
しかし、事態はそれだけでは終わらなかった。14日、バグダッド北方にある米軍など外国部隊が駐留する基地に再びロケット弾25発あまりが撃ち込まれ、兵士7人が負傷した。負傷した兵士の国籍などは明らかになっておらず、犯行声明も出ていない。また、17日には、バグダッドの政府や各国大使館が集まる「グリーンゾーン」に、少なくとも3発のロケット砲が着弾し、そのうち1発が米国大使館付近に着弾した。米国関係者に被害者は出ていなかった。
このようななか、「Nujaba Movement」と名乗るシーア派武装勢力が16日に声明を出し、米軍がイラクから撤退しない限り、米軍が駐留する基地への攻撃を続けると警告した。Nujaba Movementは新しく台頭した親イラン武装勢力とみられるが、構成人数や、KHらほかの親イラン武装勢力との関係など詳しいことはわかっていない。
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