米イラン対立の最前線と化すイラク 蓄積する市民の怒り・不満
石油の9割を中東に依存する日本にとって中東の安定は欠かせない。米イラン対立が経済に与える影響が大きいだけに、新年早々の緊張は大きく報道された。だが、これまでの報道を見ていると、我々はもう一つ重要なことを忘れてないだろうか。イラク国民が置かれている状況である。
◆米イラン対立の最前線と化すイラク
年が明けて早々、米軍がイラン革命防衛隊のスレイマニ司令官を殺害したことで緊張が一気に高まった。両国とも報復には報復の姿勢を強調し、第三次世界大戦の勃発か、など世界に一時緊張が走った。
報復として、イランはイラク西部にある米軍基地を空爆したが、その後両国とも戦争は望んでいないとの姿勢を改めて示し、現在のところ戦争の危険性は回避されている。しかし、中東で影響力を拡大したいイランとそれを阻止したいトランプ政権の対立構図はなにも変わっておらず、イラクは依然としてそのリスクの最前線に立つことを強いられている。
◆米イラン対立によるイスラム国の復活
殺害されたスレイマニ司令官は、イラクとシリアを跨ぐ形で活動してきたスンニ派過激組織イスラム国(IS)の掃討作戦において、主導的役割を担ってきた。同司令官は対IS作戦で多くのシーア派民兵をマネージしてきたが、同司令官がいなくなったことで、これまでのシーア派民兵の歯車が崩れ、ISが勢力を盛り返すことが危惧されている。最近、ISもネット上に、「我々は長年、殺害するためにスレイマニ司令官を追っていた」とする声明を発表した。これがISにとってトリガーポイントになることが懸念される。
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