イエメン内戦、今後5年続けば援助額290億ドルに

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 12月1日に国際支援団体が発表したところによると、イエメンの内戦があと5年続いた場合、現在の水準の人道支援を続けるだけでも290億ドルもの金額が必要となる。1年間に全世界で行われる人道支援の、総額を超える金額だ。

 イエメン内戦による死者はこれまでに10万人を超え、世界最悪の人道危機となっている。また、数百万人分の食糧や医療が不足している。

 国際救済委員会(IRC)の報告書によると、イエメンでは人口の80%に当たる2,400万人が人道支援を必要としており、1,600万人が飢餓の危機にある。また、内戦の影響を受け、イエメンの経済は50%縮小したという。

 同団体は、現在のペースで支援を続けても、イエメンの子供の飢餓を内戦前の水準に戻すには20年かかると警告を発している。「世界の栄養失調撲滅に向けた協定で定めるタイムテーブルの、倍の長さだ」と、IRCのデイヴィッド・ミリバンド委員長は言う。

 報告書によると、イエメンでは5歳未満の推定16万人が重度の急性栄養失調に陥っている。

「このような恐ろしい数値から、『免責の時代』の代償がいかに大きいかが見てとれます。『免責の時代』では、市民生活をまったく無視した戦争が繰り広げられます。暴力行為を止め、国際法違反の責任を問うべき外交担当者らも、それを黙認しているのです」とミリバンド氏は言う。

 イエメンの内戦は、イランの支援を受け、同国北部の広範囲を支配するフーシ派反政府勢力が2014年、首都サナアを占拠したことに端を発する。これに対しサウジアラビア率いる連合軍は、国際社会の支持を得るイエメン政府を支援し、2015年3月にフーシ派との戦いを開始した。

 IRCによると、この紛争によりこれまでに300万人、2019年の1年間だけで35万人超が住む場所を追われた。同団体はアメリカ、イギリス、フランスに対し、全国的な停戦がただちに実現するよう両陣営にプレッシャーをかけ、平和交渉を再開するよう求めている。

 IRCによると、支援を届ける主要経路であり、フーシ派の支配下にあるエリアにとってはライフラインとなっているイエメンの港、ホデイダで、国連の仲介により昨年12月に停戦が成立したことで、大規模な人道被害を防ぐことができたが、合意はまだ局地的なものに過ぎない。捕虜の交換を含む停戦協定は、まだ完全には実行されていない。

 しかしIRCは、国際社会の支持するイエメン政府と、南部の分離独立派による数週間にわたる内紛を終結する権限分割協定が結ばれたことで、「より包括的な平和交渉への望みが見えた」とも指摘する。

 世界各国のエネルギー供給に影響を及ぼしたサウジアラビアの石油施設への攻撃について、フーシ派が犯行を声明したことを受け、サウジアラビアは9月、オマーンでフーシ派との間接交渉を開始した。アメリカは、攻撃はイランによるものだと主張しているが、イランは関与を否定している。

 サウジアラビア率いる連合軍は2016年、サナアにあるイエメンの主要国際空港を閉鎖したが、今回の交渉では、同空港の営業再開などについて暫定的な合意を目指している。

 IRCは、このような進展が見られたことで、平和に向けた「またとない絶好の機会」が訪れていると言う。

By SAMY MAGDY Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP