ギリシャの島々、難民殺到で苦境 トルコの動き次第でさらに増加も

AP Photo / Petros Giannakouris

 エーゲ海に浮かぶ、ギリシャ東部の島々。いま、ここにシリアなどからの移民や亡命希望者が殺到している。現地ではこれまでも難民キャンプの過密状態を緩和するための努力がなされてきたが、急増する難民に対応しきれていないのが現状だ。

 2016年、欧州連合(EU)とトルコの間では難民協定が結ばれ、亡命者抑制と引き換えに、EU側からは難民支援金60億ユーロが提供された。しかしいま、エーゲ海東部のレスボス島やサモス島など、ギリシャの島々に流入した難民の数は2016年以降で最大数を記録している。

 難民急増問題はいまに始まったことではなく、トルコがシリアのクルド人武装勢力に軍事攻撃を開始する以前から、ギリシャにとって悩みの種だった。しかし、それが今後さらに悪化する恐れもある。シリア侵攻が国際世論の非難を浴びるなか、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、「これを占領と呼ぶなら、300万人以上のシリア難民をヨーロッパに送り込む」と警告し、ヨーロッパ諸国の批判を抑え込もうとしている。

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 ギリシャはEUに対し、難民協定で規定された支援金に追加資金を提供するよう求めている。しかし一方で、トルコ政府に対しても厳しく批判している。

 ギリシャ移民政策省のギオルゴス・クムトサコス副大臣は、国営のERTテレビで次のように語っている。「トルコは移民問題を、地域政策の一環として利用している。EUとトルコ、そして欧州とアメリカの関係は問題を抱えているが、シリアの現状もまた同様だ」

 ギリシャ軍の支援を受けた沿岸警備隊がパトロールを強化しているにもかかわらず、シリアやアフガニスタン、イラクなどからの移民を乗せたゴムボートが島に漂着している。

 それに伴い、過密状態の難民キャンプの状況は悪化している。9月29日には、収容可能人数の4倍に及ぶ難民が暮らすレスボス島のモリア難民キャンプで大規模な火災が発生。それをきっかっけに、現地では暴動が起きた。

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 ギリシャ政府は、島にいる人びとの本土移住を進めるとともに、キャンプのネットワークを拡大すると約束した。しかしいまのところ、島に上陸する人の方が、島を出る人よりも多いのが現状だ。

 欧州対外国境管理協力機関(FRONTEX)によると、今年9月にトルコからヨーロッパに不法入国を試みる外国人の数が急増したという。

 また、同月には東地中海経由でEU圏内に渡ろうとする事案が1万1,500件以上にのぼっており、8月より16%も増加している。今年9月までの9ヶ月間で東地中海における越境行為は約5万600件で、前年比22%増となっている。

 人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、モリア島を「過密していて、安全でない」と表現し、ギリシャが亡命希望者を定住させることを支援するようEU諸国に要請した。

 当局は、このまま移民が増え続けると、厳しい冬の局面を乗り切れないのでは、と不安視している。

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 ギリシャの保守的な新政府は、「難民認定申請権を持たない移民は拘留する方向で検討中だ」と話しており、2016年のEU・トルコ間の合意内容に基づき、トルコへの送還を再開する方針だという。

 EUは、移民の急増に対処するため、ギリシャに多くの支援を提供する用意があるとする一方で、ギリシャ政府に対し国外追放を強化するよう求めている。

 欧州委員会移民・内務総局のディミトリス・アブラモプロス氏は、ギリシャの「非効率的」な対応もまた、難民キャンプが過密状態となる大きな要因であると述べている。

 ギリシャの古参政治家であるアブラモプロス氏はアテネにて、「私の記憶が正しければ、トルコに送還された移民の数は1,300人だが、本来は3万5,000人であるべきだった」と2016年の移民協定の履行について言及した。

「これまで散々尽力してきた結果が、この数字だ。それが示しているのはどういうことか。つまり、島には難民や移民がいるべきではないということだ」

By PETROS GIANNAKOURIS Associated Press
Translated by isshi via Conyac

Text by AP