GSOMIA破棄 懸念すべきは米韓関係の悪化
日韓摩擦がついに安全保障上の領域にまで及び始めた。文在寅政権による日韓GSOMIAの破棄決定を、筆者を含め、多くの安全保障専門家は想定していなかったことだろう。文在寅大統領は、極東安全保障の現実をいかに考えているのだろうか。そして、今回の決定によって、いかなる影響が出てくるのだろうか。
◆日韓GSOMIA破棄による政治的な「隙」
まず、北朝鮮の核・ミサイルなどについての情報交換など、自衛隊と韓国軍との間で軍事情報の共有がなくなるとされるが、日米同盟で補えるなど大きな影響はないとの指摘も多く聞かれる。だが、この問題は中長期的視点で考える必要があり、中長期的には、「現場における実務的なデメリット」より、「政治力学的なデメリット」のほうがはるかに大きいだろう。
従来、日米韓の安全保障協力は、海洋進出を進める中国や核・ミサイル開発を続ける北朝鮮と対峙するうえで大きな役割を果たしてきた。日米韓の安全保障協力は、三つの「線」で繋がっている。日本と米国の日米同盟、米国と韓国の米韓同盟、そして同盟ほど太い線ではないが日韓GSOMIAだ。要は、この三角形を構成する一つの線が消えることによる影響を考える必要があるだろう。
今回の破棄は、中国や北朝鮮に、「政治的な隙」を与えることになる。北朝鮮は、核・ミサイル開発を密かに進め、対米政策ではいっそう戦略的に行動し、中国はいっそう拡張主義的な行動を取るかもしれない。また、竹島付近での中露による領空侵犯のように、日米の顔を伺うための挑発的行動を活発化させる可能性もある。つまり、そういった周辺国に何かを試す動機を与えることになる。
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