グリーンランド購入のメリットは? 「無理だけどアリ」の理由
◆国益にかなう? 軍事的経済的メリット
複数のメディアが、グリーンランド購入はまず無理だろうが、目のつけどころはよいと見ている。現在アメリカはグリーンランドに空軍宇宙軍団を置き、弾道ミサイル早期警戒システムの一部であるレーダー基地を持っている。保守系のワシントン・エグザミナー誌のコラムニスト、クイン・ヒルヤー氏は、恒久的には所有権を持ったほうが望ましく、さらに基地の数が増やせて好都合だとしている。また、デンマークのような戦力投射(軍事力を準備、輸送、展開して軍事作戦をすること)の必要のない小国にとってグリーンランドの軍事的価値はないと述べる。デンマークはグリーンランド自治政府に毎年6億ドル(約638億円)の補助金を出しているため、アメリカに売り渡したほうが収入になり経費削減にもつながると主張している。
The Week誌は、気候変動の側面からグリーンランドは買いだと述べる。グリーンランドには石油から鉄鉱石、金やダイヤモンドまでさまざまな資源が眠っており、温暖化で氷が解ければ採掘が容易になるとしている。温暖化が進むことは望まないが、そうなった場合でも、アメリカは21世紀の極地採掘で世界をリードできるとしている。
ブルームバーグのバーシドスキー氏は、ロシアの軍や民間が北極圏で開発を進めており、アメリカは後れを取っていると述べる。よってグリーンランドでのアメリカのプレゼンスを高めることで、氷が解けて開ける北極海ルートをロシアが中国と協力して独占することを阻むことができるとしている。
◆チャイナパワーここにも 慌てるアメリカ
アトランティック誌は、トランプ発言の前に、しばらく忘れていたグリーンランドの重要性をアメリカに再認識させた事件があったとする。2018年に、中国がグリーンランドの3つの空港に出資を希望していたことがわかった。結局アメリカのマティス国防長官(当時)がデンマーク側により良い融資条件を提供するとしてロビー活動を成功させたが、このときアメリカは北大西洋の要所を失ってはならないと気づいたのだろうと同誌は述べている。ポンペオ国務長官は、北極海は第二の南シナ海になりえるとして中ロの動きを警戒しているという。もっともトランプ政権は、温暖化は「デマだ」という態度を取っており、氷が解けることで台頭する国々を批判するのはなんとも不思議だと同誌は皮肉を述べている。
バーシドスキー氏は、北極圏でのアメリカの国益を守るならば、デンマークやノルウェーなどの欧州の同盟国と建設的な協力をすべきだとし、そのほうが領土拡大よりも経済的に理にかなっているとしている。
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