ハワイより西は中国が……「第3列島線」と太平洋の海洋秩序

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◆第3列島線は非現実的?
 中国は、2010年までに第1列島線、2020年までに第2列島線を制覇するとのビジョンを掲げていたが、それは実現しておらず、第3列島線はそれ以上に現実味がないかもしれない。しかし、米中の力関係は接近し続けており、中国の南太平洋戦略にも今後大きな変化は見られないだろう。

 チリのセバスティアン・ピニェラ大統領は2019年4月、第2回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムに参加するため北京を訪問した際、習近平氏と会談し、一帯一路への支持を改めて表明し、経済貿易分野で中国との関係を強化すると明らかにした。中国にとって、南米チリとの関係は太平洋を通る海上貿易路を確保する上で重要で、そして、その中継地点として南太平洋は戦略的な要衝となる。第3列島線は、太平洋において米国を軍事的にけん制する意味だけでなく、中国が南米航路を開拓する意味でも重要となる。

 第1列島線、第2列島線の確保なしに、第3列島線のそれが実現するはずはない。しかし、中国は経済的支援という手法で自らの影響力を拡げようとしている。今後、南太平洋をめぐる中国と関係諸国との競争はいっそう激しくなるだけでなく、中国はチリとの関係を重視して、ポリネシア最東端にあるイースター島への経済的展開を試み、東西の両方から南米航路の開拓、同海域での影響力確保などを目指す可能性もある。フランスやオーストラリア、ニュージーランドや米国などは、第3列島線の行方を注視している。

Text by 和田大樹