北極海で権益拡大、中国の「氷上のシルクロード」に米警戒 第3の一帯一路

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◆日本近海を通過する中国の北極海航路
 氷上のシルクロードは、必然的に日本近海を通過することとなる。具体的には、九州の北にある対馬海峡から日本海に出て、宗谷海峡や津軽海峡を抜けベーリング海に抜けるルートである。場合によっては、日本周辺の海洋安全保障秩序だけでなく、日本の北極海戦略にも影響を与えることが想定される。天然資源が豊富な北極海は、資源エネルギーに乏しい日本にとっても極めて重要な海域だろう。日本企業も北極海に大きな期待を寄せ、その開拓に積極的に関わろうとしている。今後、北極海をめぐって日中の緊張が高まる可能性もある。

◆大国間の覇権争いの場と化す北極海 
 これまで北極海は、地球環境といった視点で長年議論されることが多かった。しかし、現在、北極海は軍事・安全保障上の戦略空間となりつつある。これまでの国際政治は、いってみれば北極海は凍っているという前提で語られてきたのであり、海氷が溶けて船(海軍)が通過できるようになれば、米中(またはロシア)間の覇権争いは北極海でも生じるようになることだろう。また、債務の罠に陥っているスリランカやパキスタンのように、中国は、カナダやノルウェー、アイスランドやデンマーク(グリーンランド)へ同様のアプローチを仕掛け、影響力を高めようとすることは想像に難くない。

 今後、北極海は、経済、そして軍事・安全保障という中でその存在性をいっそう増すであろう。

Text by 和田大樹