混乱加速、軍事衝突も……米のイラン近海への空母派遣 トランプ政権の不安

Kaitlin McKeown / The Virginian-Pilot via AP

◆失敗なら戦争突入の危険も
 しかし、イランを刺激することで混乱が深まる懸念もある。米デイリーニューズ紙(5月6日)に寄稿したリチャード・クラーク元テロ対策担当大統領補佐官は、軍事的衝突の激化に警鐘を鳴らす。アメリカは経済的圧力をかけることでイランの政権交代を誘発しようと試みてきたが、これは現実的な路線ではないと同氏は分析している。さらに今回の軍事的圧力強化で衝突は先鋭化への道を歩み、民主化はさらに遠のくこととなった。

 さらに直近では、イラン産原油の輸入国に対する禁輸適用除外ルールの撤廃をアメリカが決めたことから、イランは苦境に立たされた。反撃としてイランはこうした措置を看過しないというメッセージを発信するなど、対立は激しさを増している。同氏は「イランのメッセージは明らかだ。アメリカまたはアメリカの国益を、ことによると中東の代理組織を利用し、攻撃することだ」と述べ、サイバー戦による直接攻撃も含めた対立の激化を懸念している。

 もしアメリカが同盟国と足並みを揃えイランを追い込むことができれば戦争回避も現実味を増すが、ガーディアン紙はアメリカと欧州諸国との連携の悪さを指摘している。2015年に国連が承認したイラン核合意を欧州が遵守するなか、アメリカは昨年に離脱を表明し、経済制裁に舵を切った。信頼が揺らぐトランプ政権だけに、かつての同盟国にイラン政権交代への支援を求めることもできない、と同紙は指摘している。

 あくまで強硬路線を維持するトランプ政権だが、先行きは不透明だ。

Text by 青葉やまと