中国が大幅譲歩で継続、マレーシア鉄道計画 「一帯一路」のジレンマ

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◆妥協した中国、その狙いと影響
 また、北京としては今回示した姿勢で、各国から表面化する抵抗や反発を払拭したい狙いもあるだろう。近年、中国による一帯一路政策は、国際社会から「債務の罠」「債務帝国主義」などと揶揄されていることがあるが、北京もそれは理解しているはずである。中国としては、今回のように妥協的な姿勢を示すことで各国との摩擦を少なくし、一帯一路政策を円滑に進めていきたいのが本音だろう。

 しかし、この姿勢は逆の可能性も秘めている。すなわち、債務の罠にかかっている国々からすると、「マレーシアのようにすれば、いつか中国も妥協するのでは?」と思い込み、一度プロジェクトの中止を一方的に宣言し、また、債務の罠に苦しむ国々が有志連合みたいなものを構成し、中国と対峙することも想像できる。

◆4月25日から開催される一帯一路サミット
 そのようななか、北京では25日から27日にかけて一帯一路サミットが開催される。今回のサミットは初回の2017年から2年ぶりの開催で、第1回を上回る37ヶ国の国家指導者が参加する予定となっている。欧州ではイタリアとポルトガル、スイスやチェコなど、東南アジアではマレーシアやインドネシア、ベトナム、タイ、シンガポールなどが指導者を送り込む予定だ。

 王毅外相は、サミットに先立ち、「一帯一路はすべての参加国に利益をもたらすものであり、決して中国中心のものではない」とサミットの意義を強調し、今回のサミットで、近年各国で高まる一帯一路への反発と抵抗の声を払拭したい狙いが見え隠れする。中国は共同声明の草案で、「持続可能で環境に優しい成長」との文言をいくつか盛り込んでいるらしいが、米国などは表面上だけの話で、実態は何も変わらないとの態度を維持しており、一帯一路サミット後も引き続き、それを巡る争いが続きそうだ。

Text by 和田大樹