中・東欧での影響力を高める中国 拡大する「一帯一路」

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◆中国の政治的意図は?
 では、その政治的意図はどこにあるのか。中国は中東欧への接近について、「決してEU加盟国の分断を狙っておらず、西欧に比べると経済力の弱い中東欧諸国を支援するため」と説明しているが、イタリアの一帯一路参加の際に、“中国によるG7切り崩し”という議論が浮上したように、EU内からも内部対立や分断などを懸念する声が聞こえる。

 同会議でEU加盟国は11ヶ国、EU加盟を目指す国は5ヶ国だが、現在28ヶ国のEU内の3分の1以上が参加していることになる。今後、さらに中国の経済的な影響力が高まるのであれば、G7だけでなく、EUが受ける政治的影響もいっそう大きくなることだろう。ましてや、経済的には中小国といえる国々が中国への依存を高めている今日においては、G7より受ける影響は大きいかもしれない。

◆中国が想定する懸念
 しかし、アジアやアフリカから中国への抵抗と反発の声が聞かれるように、一部の国ではそういう流れも見え隠れする。たとえば、チェコの上院議会では3月、北京によるウイグルやチベットへの人権侵害を非難する決議案が採択され、同月に台湾を訪問していたプラハ市長は現地で、国際姉妹都市である北京と締結している協定上にある「一つの中国」政策の箇所を削除する姿勢を示した。北京としても、アジアやアフリカから聞こえるような反発の声が、中東欧諸国からも大きくなることは避けたいのが本音だろう。

 また、中国による中東欧接近については、そこを旧支配圏としていたロシアがどんな顔色を示すかもポイントだろう。プーチン大統領にとっても、中国は経済的に重要な相手であるが、中央アジアのように、自らの旧支配圏で中国のプレゼンスが高まることは良く思わないだろう。昨年8月には、ウクライナの首都キエフに一帯一路を推進するための貿易促進センターなるものが創設されたということだが、中東欧をめぐる中露関係にも目が離せないところだ。

Text by 和田大樹