中国によるギリシャの港開発に思わぬ「待った」 古代からの要衝の問題

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◆突如古代遺跡に言及 計画拒否に中国側驚き
 コスコは新たなロジスティクスセンター、クルーズ船ターミナル、4つのホテルとショッピングモールの建設を含む6億ユーロ(約750億円)規模の投資をピレウス港で行うと発表した。地元や国の当局者たちが、このプランの一部に反対したため、2月になってギリシャ政府は計画の半分だけを承認し、残りはギリシャ中央考古学評議会(KAS)の再検討にゆだねるとした。

 ところがKASは、ピレウスの町の半分は古代遺跡だと主張。ショッピングモールの建設を阻止し、ホテルの建設に変更と規制を求め、2つの造船所の操業を一時停止することを提案した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によれば、KASはギリシャで最も力のある役所の一つで、国家の遺跡や遺物への害を理由に、投資を遅らせてしまうこともしばしばだという。

 コスコの関係者は、これまで数十年間ピレウス港で考古学的懸念が示されたことはなかったとし、KASの決定に驚いているという。計画のすべてが拒否されたわけではないが提示された変更の実施は非常に困難、または不可能と述べている。計画を調整し再提出するが、まとめて実施されなくては意味がなく、一部の投資のみ許可というやり方をギリシャ政府は選べないとしている(WSJ)。

◆教訓か選挙対策か? いずれにしても中国は必要
 サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)は、与党、急進左派連合(SYRIZA)のなかにはコスコの拡張計画に懐疑的な勢力もあり、外資には厳密な調査が必要だと信じていると解説する。今回コスコの計画のほぼすべてが反対されたことによって、一帯一路に参加する中国企業に関係国の地元の政治的思惑に対処する用意があるのかという問題が浮き彫りになったと同紙は述べる。

 ロンドンを拠点とするシンクタンク、チャタム・ハウスの研究員、Yu Jie氏は、中国の国営企業は、社会的責任、ビジネスの持続可能性など、財政関連以外で鍵となる問題に対処するのはいまだに不器用だと指摘する。中国企業が一帯一路プロジェクトで成功するには、お金を浴びせることではなく、相手の心を掴むことが必要ということだ(SCMP)。

 一方ギリシャメディアは、今年の選挙を前に支持率が落ちていることから、現政権は牛歩戦術を取っているのではないかと報じている。地元の行政やビジネス関係者は、地方、国政、欧州の選挙が予定されている今年に、既存の運輸会社、ホテルやそのほかのビジネスに影響を与えるコスコの計画を認可するという政治的コストを心配しているとWSJは指摘している。

 欧州諸国が二の足を踏むなか、債務危機に苦しむギリシャに手を差し伸べたのは中国で、現政権は中国からの投資を維持したがっている。ギリシャのドラガサキス副首相は、政府はギリシャでのコスコの事業が容易になるよう最大限のことをすると表明しており、ピレウス港開発計画は後退しても、ギリシャにおける中国の存在感が今後ますます高まることに間違いはなさそうだ。

Text by 山川 真智子