金正男氏殺害、真相は闇の中へ 関係国は解明に関心なし 北朝鮮は責任回避に成功
◆実行犯に重罪の適用なし
フランスのAFP通信は、首謀者らが責任の追及を断つことに成功した、との識者による見解を伝えている。マレーシアの検察は今月1日、殺人罪に問われていた実行犯の一人であるベトナム人女性の訴因を傷害罪に変更した。もう一人の実行犯であるインドネシア国籍の女性は、先月すでに殺人罪の起訴を取り下げられ釈放されている。
英ガーディアン紙によると、本来は殺人罪で絞首刑に処される公算もあったが、危険な兵器を使用し傷害を引き起こした事実を認めることを条件に、罰金の引き下げと刑期の短縮が提示された。本人はこれを承諾し、法廷で「満足です」と短く述べている。取引条件では10年の刑期が提示されていたが、判決では3年4ヶ月に短縮された。弁護団によるとさらに刑期の短縮が適用され、5月には釈放される可能性がある。当時世界に衝撃を与えた暗殺事件は、重罪の該当者なしという形で決着することになる。
◆北朝鮮にも責任の追及なく
2名の実行犯は工作員に利用されたとの見方が主流だ。暗殺は北朝鮮が主導したとの見方はすでに既定路線となっており、米AP通信は、北朝鮮大使館が4名の工作員らの逃亡を支援したと報じている。工作員たちのフライトの手配に関与したほか、空港までの移動に使う車を市民名義で購入したとされている。
さらには、ガーディアン紙が紹介する政治学教授の見解によると、北朝鮮の意思をアピールする狙いもあったという。あえて混雑した空港で実行することで、公共の場での大量破壊兵器の使用を厭わないという北朝鮮の態度を印象づけることができる。
こうして思惑通りに進んだ暗殺事件は、真相の解明を望む者が誰もいないことから、北朝鮮側への目立ったペナルティ無しに終幕となりそうだ。AFP通信は韓国の政治アナリストの見解として、どの国家も事件の究明に関心を持っていないと伝えている。北朝鮮の動きとしては、事件後に外交的保護権を発動してマレーシア側に責任を求めることはなかった。さらにマレーシア政府も、公人を失った北朝鮮への義理を通すことよりも、インドネシアとベトナムとの良好な外交関係を維持することを優先した。こうして金正男事件の真相究明は、誰も望まぬところとなった。波風立たぬ穏便な決着となったが、責任回避に成功した北朝鮮が将来同様の事件を繰り返す可能性はある、と韓国の別の国際学教授は警告している。
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