イタリアに伸びる「新シルクロード」 ベルト上で中国が抱える問題

Giuseppe Lami / ANSA Via AP

◆中国の影響力拡大を懸念するロシア
 キルギスと同じように、中国は天然資源が豊富なカザフスタンやウズベキスタン、トルクメニスタンなど中央アジア各国へ経済的展開を推し進めている。キルギスで見られるような抵抗や反発の声は各国でも聞かれるのだろうが、この動きを強く懸念する大国がある、ロシアだ。カザフスタンなどは旧ソ連圏の国々で、ロシアにとっては自らの裏庭である。近年、その裏庭で中国の影響力が高まっていることをプーチン大統領は警戒している。

 一方、今年2月下旬にウズベキスタンで中央アジア各国の政府関係者が集う国際会議が開催されたが、各国からは同地域でパワーゲームを繰り広げる中国とロシアに対し警戒感が示されたという。

◆シルクロード経済ベルトの要となる新疆ウイグル自治区
 新疆ウイグル自治区は中国最西部に位置し、中央アジアの入り口となるキルギスと国境を接している。シルクロード経済ベルトを推し進める北京にとって、新疆ウイグル自治区は地理的にも重要だ。

 その中国政府は3月18日、同自治区の治安動向に関する白書を発表した。それによると、2014年からの5年間で1600あまりのテロ組織を摘発し、テロリスト約1万3000人を拘束したとされるが、昨今、世界からは同問題をめぐって北京を非難する声が強まっている。

 しかし、この問題で北京が折れることはない。それには二つの理由がある。一つは経済的な理由で、新疆ウイグル自治区はシルクロード経済ベルト上、中央アジアの入り口に位置し、北京にとって現地の安定は欠かせない。もう一つは政治的な理由で、習近平政権は同自治区を拠点とするイスラム過激派など国内の反政府勢力の動向を強く警戒している。

 2013年10月、北京にある天安門広場に車が突っ込み炎上し、5人が犠牲となるテロ事件があったが、この事件も北京に不満を持つウイグル独立派の関与が強く指摘されている。また、同自治区のイスラム過激派はキルギスなど周辺諸国に越境し、現地の過激派勢力と協力するなどして活動しているという。

 以上のように、欧州へ通じるシルクロード経済ベルト上には多くの難題があり、今後さらに表面化してくるかもしれない。今後、中国はどのように同構想を進めていくのだろうか。

Text by 和田大樹