イスラム国最後の拠点への攻撃再開 シリア

AP Photo / Felipe Dana

 アメリカの支援を受けるシリアの武装組織は1日、捕らわれていた民間人や人質が避難するのを待ち、イスラム国(IS)が支配する国内最後の拠点の解放に向け軍事作戦を再開した。報道官が明らかにした。

 ムスタファ・バリ報道官によると、最後の民間人が避難した後、クルド人主力の武装組織「シリア民主軍」(SDF)が武力鎮圧を再開した。

 報道官はAP通信社に対し「まだ残っているのは降伏を望まない戦闘員だけだ」と言う。

                                                                                                                 

 ユーフラテス川東岸から敵を根絶する作戦が開始されたのは昨年9月。最終的にイスラム国は、イラクとの国境付近にあるバグズ村の一角にまで追い詰められた。ここには多数の民間人や人質が残されているとSDFが明らかにしたことで、軍事作戦は先月12日に中断されていた。彼らが潜んでいたのは崖の上や地下壕だ。

 イスラム国が支配するバグズ村の一角は、片側をユーフラテス川、もう片側をイラク国境付近に広がる砂漠に囲まれている。川岸に設けられた野営キャンプや仮設住宅で数千人が生活していた。

 この2週間で多くの民間人が避難した。大半は着の身着のままの女性や子供たちだ。避難場所で活動をしている唯一の救助団体フリー・ビルマ・レンジャーズの推計によると、先月20日以降にSDF主導でイスラム国の拠点から避難した民間人は1万人を超える。

 イスラム国戦闘員の家族を含む避難民は、食料が不足し、水や医療の供給も不十分だったと話している。悲惨な状況にもかかわらず、かつてはイラクとシリアの3分の1を占めたイスラム国の領土では多くの人々が抵抗をみせた。

 避難民が増えるにつれて、SDFと連合軍は対象を選別するようになった。女性と子供は数マイル離れたところにある避難民キャンプへ輸送。イスラム国と関わりがあったとみられる男性は別の施設に拘留した。

 トランプ大統領は先月28日、かつてはシリアを支配していたイスラム国がその領土を「100%」失ったと述べたが、関係者の観測ではバグズの一部地域にまだ数百人のIS戦闘員がおり、徹底抗戦を続ける可能性がある。

 バリ報道官は作戦遂行にかかる時期の見通しを示さなかったものの、「激しい戦闘」が予想されている。

 複雑な地下壕網に加えて自爆、地雷などによる攻撃が想定され、非常に狭い範囲での戦闘になるという。

 SDFで軍を率いるアドナン・アフリン氏は、イスラム国のアラビア語表記を引用しつつ、「ダーシュが残っている地域をすべて残らず滅ぼす戦闘が始まる」と述べている。

 アフリン氏によると、自爆を含めあらゆる武器を用いるとみられる残存兵の抵抗が予想される。

 戦闘員の多くは、ヨーロッパ、アジア、イラク、同地域で生まれたアラブの人々だ。

 1日には、羊を運ぶのに使用されるトラック6台で避難民が連れ出されたが、その数はこれまでで最小の200人ほどだった。イスラム国が支配する地域の境界付近に派遣された約10台のトラックに乗る人はもういない。運転手は、何時間待っても避難民が出てこなかったと話している。

 その日連れ出された避難民には負傷した男性もいたが、大半はロシア、インドネシア、ボスニア、ダゲスタン、カザフスタン、エジプト、シリア、イラクの女性と子供たちだった。やつれた表情で、わずかな身の回り品を持ち、精神的に不安定な子供を連れていた。

 ウム・モハメド氏(38)は1日、3人の子供たちと一緒にバグズを離れた。夫はイスラム国の助けを借りて、バグズの地にとどまっている。「まだ多くの戦闘員と家族が残っています。バグズのイスラム国勢力は弱まっていますが、他の地域では力をつけています」と話している。

 イスラム国が支配している最後の拠点バグズが制圧されれば、シリア・イラクにまたがる地域に根を張っていたこの過激派集団との4年にわたる国際紛争が終結に向かう。イスラム国は、両国の約3分の1を支配していた2014年の最盛期に自らの支配地を「カリフ制国家」と呼んでいる。

 トランプ大統領は昨年12月、シリアに駐在する推定2,000人の兵士を撤退させると宣言したが、バグズでの戦闘が終結すればそれが可能となる。宣言はしたものの、シリア北西部を安定化させる国際的な取り組みの一環として、数百人の兵士を残す形で大統領は軌道修正していた。

 イスラム国への軍事作戦が再開されたことで、市民が避難する間の暫定的な休戦状態に終止符が打たれた。先週だけでも女性と子供を中心とする1万3,000人がハサカ県にあるアルホル避難民キャンプにやってきた。国連によると現在の収容人数は4万5,000人ほどだという。

 国連が1日に出した声明によると、昨年12月以降、シリア・デリゾール県の過激派集団からアルホルに逃れてきた人のうち84人が移動中に死亡し、そのうち5歳以下の子供が3分の2を占めた。

 国連人道問題調整事務所のジェンス・ラーケ報道官はジュネーブで開かれた会見の中で、「避難所に来た人の多くはやつれた表情で、飢えと病気に苦しんでいた」とコメントしている。

By SARAH EL DEEB, Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP