ICJ「英のチャゴス諸島統治は違法」、返還を勧告 米が基地に利用
◆国際社会を味方に 英統治の違法性認められる
チャゴス諸島問題は、長らく英モーリシャス間で論争となってきた。イギリスは、島民たちを強制退去させたことについては非を認めており、1980年代に入って1300人以上の元島民たちに、帰還を放棄することを条件に補償金を支払っている(CNN)。モーリシャス政府に対しては、防衛目的で利用する必要がなくなれば、チャゴス諸島を返還すると伝えてきた(BBC)。
イギリスの態度に業を煮やしたモーリシャスは、国際的な支持を得るための外交キャンペーンを展開する。昨年には国連総会でチャゴス諸島問題についてICJの意見を求める決議が、おもにアフリカ諸国の支持を得て採択されたことで、今回の勧告となった。ICJのアブドゥルカウィ・アハメド・ユスフ判事は、チャゴス諸島のモーリシャスからの分離は住民の自由意思に基づくものではなく、イギリスが引き続き統治することは間違った行為だと述べ、イギリスは「出来る限り迅速に」統治を終わらせる義務があると述べた。勧告に法的拘束力はないが、モーリシャスは植民地主義を終わらせる歴史的判断だと喜びを表現した。
英外務省の報道官は、ICJの勧告の詳細を注意深く確認するとしたが、勧告は判決ではないとし、英領インド洋地域の防衛施設は、イギリス国民だけでなく世界をテロや組織犯罪、海賊行為などから保護する助けとなっていると述べている。
◆孤立したイギリス 基地租借のアメリカも複雑
ICJの判決は、今のイギリスの立場を表すものだとメディアは指摘する。そもそも国連総会での討議でも、多くの欧州諸国や同盟国がイギリスを支持せず、ドイツ、フランス、カナダは投票を棄権。元植民地だった国々のほとんどは、ICJの意見を聞くことに賛成票を投じたと。モーリシャスの代理人であるフィリップ・サンズ弁護士は、EU離脱投票以来、イギリスはサポートを失ったと述べる。イギリスは台座から転げ落ちたとし、インド洋の小さな地域での帝国主義と植民地主義の終わりが、偶然にもイギリスが内向きになっているときと重なったとBBCに語っている。
一方、ディエゴ・ガルシア島に基地を持つアメリカの立場も複雑だ。元米軍関係者のカール・シュスター氏は、イギリスが勧告を受け入れ、ディエゴ・ガルシア島がモーリシャスに返還される可能性に言及。そうなれば基地の存続はモーリシャス次第だと述べ、既存の合意が無効になるのなら、アメリカは再交渉を迫られるとCNNに話している。同氏は米軍が必ずしも弱体化することはないとしているが、基地を失えば地域の「後方支援の変更」を強いられる可能性があると見ている。CNNによれば、基地は長らく南シナ海を含むアジアのミッションを行う爆撃機の着陸地点としても利用されており、日本も今後を注視する必要がありそうだ。
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