印パ緊張のもう一つのリスク 発端のテロ、過激派の不穏な動き

Fareed Khan / AP Photo

 昨今、インドとパキスタンの間で軍事的な緊張が高まっている。今回の緊張が高まる発端となったのは、インド北部ジャンム・カシミール州のプルマワ(Pulwama)で2月14日、パキスタンを拠点とするイスラム過激派組織「ジェイシェ・ムハンマド(JeM)」が、インド治安部隊を狙った車爆弾テロを実行し、40人以上が死亡したことだ。このテロ事件を機に、インド軍はパキスタン領内に向けて砲撃したり、JeMの拠点に空爆したりするなど、軍事的な緊張が高まっている。双方の攻撃によって、現地の住民数千人が避難する事態にも発展している。今回の緊張によって、どんな影響が出ているのだろうか。また、今後カシミールを巡る情勢はどうなっていくのだろうか。

◆3月に入っても緊張は続く
 3月に入っても緊張は続いている。3月2日未明、インド軍とパキスタン軍はそれぞれの支配地域にある村々に向かって無差別に攻撃し、4人が死亡、4人が負傷した。死傷者は一般市民で、今後、現地住民のデモや暴動が激化することも懸念される。また同日、同じカシミール地方の別の場所でも双方の衝突が発生し、民間人が少なくとも6人、パキスタン軍兵士2人が死亡した。

 パキスタン軍は1日、先月27日に撃墜したインド軍戦闘機のパイロットを解放したが、それを機に事態の沈静化を計りたい狙いだ。パキスタンのカーン首相はテレビ演説で対話による解決を呼び掛けているが、インドのモディ首相は厳しい姿勢を崩していない。

Text by 和田大樹