英、空母「クイーン・エリザベス」太平洋に派遣へ 中国反発、財務相訪中が中止に

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◆「バカげたスピーチ」「批判は的外れ」と賛否両論
 FTは、この対中政策を巡る議論は、ブレグジットを間近に控えた重要な時期に「間違いなく閣僚間の分断を招いた」と批判的に報じている。同紙は、ハモンド財務相とハント外相を筆頭とする経済的親中派と、ウィリアムソン国防相を中心とする北京を安全保障上の脅威とみなすタカ派の溝は深いとしている。オブザーバー紙社説も、「ブレグジットの成功は、世界第2位の経済大国にひざまずくことができるかどうかにかかっていると考えるのなら、重要な会談の前夜にホストを怒らせることなどありえない」と、ウィリアムソン氏の発表のタイミングを非難する。

 一方、テレグラフ紙のオピニオンは、こうした批判的な意見は論点がずれていると指摘する。「中国は、(南シナ海に)対艦ミサイルで武装した複数の軍事基地を作っており、そのうちの3つは米軍のパール・ハーバーよりも大きい。脅威をコントロールするとすれば、それらこそが対象だ」と、南シナ海をこのまま中国の意のままにさせておくことの危険性を指摘する。経済的観点でも、今回予定されていた中国との100億ポンド規模の取引よりも、南シナ海を通過する東南アジア諸国との10倍以上の規模の取引の安全を守る方が重要だと指摘する。また、チベットやウイグルで人権侵害を公然と行う国と積極的に貿易を行うことの倫理上の問題も指摘している。

 ウィリアムソン国防相は、EU離脱後は、冷戦終結後存在意義が薄れつつあるNATO(北大西洋条約機構)よりも、アメリカ、日本、オーストラリア、インドなどのアジア太平洋地域の同盟国との軍事的連携の強化を主張している。大英帝国海軍の復活の主旨は、軍事同盟関係の最構築とも言える。メイ政権全体としても、その考え自体には異論はないだろう。しかし、国民の目先の雇用と生活を守ることも、政府の重要な仕事だ。メイ政権のブレグジットは、「対中戦略」という軸でも、大きくぶれているようだ。

Text by 内村 浩介