「キューバの音響攻撃」、実はコオロギ? 米外交官を襲った音、科学者が解析

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◆政治利用された? 二国間関係にも影響
 キューバ政府は事件への関与を最初から否定してきたが、トランプ政権は外交官たちを「攻撃」の犠牲者と呼び、ハバナの米大使館のスタッフ数を劇的に削減した。事件は音響攻撃で、兵器化されたマイクロ波が使われたなどさまざまな解説がなされ、集団ヒステリーやウイルス感染だとも騒がれた。本当か嘘か、意図的なのか偶然なのかはっきりしないまま、事件をきっかけに2015年にオバマ政権下で国交を回復したアメリカとキューバの仲は急速に冷え込んだ(ガーディアン紙)。

 ライターのジャック・ヒット氏は、謎の騒音による症状は、「被害を受けたと信じたことで、肉体的症状が出た」という集団ヒステリー説をヴァニティ・フェア誌の記事で主張している。そもそも、「音響攻撃」説を持ち出したのは国務省であるとし、オバマ政権のしたことをすべて否定しようとするトランプ氏や右寄りの勢力、また前回の大統領選に出馬した、反キューバのマルコ・ルビオ上院議員などに支持された意見だと、WGNラジオの番組で述べた。確たる証拠もなくキューバを犯人とするのは恣意的かつ危険だとしている。

◆ロシアまで登場 陰謀説がさらに拡大
 キューバの事件後、同様の事件が中国でも報告され、今度は事件の背後にいるのはロシアではないかというニュースまで、昨年9月には飛び出した。NBCは、キューバの事件は、アメリカとキューバの接近を嫌うロシアによる攻撃だという米諜報機関の見方を報じていた。ロシアが未来型兵器を使ってアメリカ政府の職員の脳にダメージを与えたのなら、これは西側諸国に対するロシアの侵攻の驚くべきエスカレーションを意味すると述べていた。

 コオロギ説が出た現段階で、国務省の報道官は、「原因を特定するための調査は進行中」とCNNに述べている。メディアも巻き込みかなりの大事件になっただけに、もしも真犯人がコオロギならば、「音響攻撃」は大型の政府発「フェイクニュース」ということになりそうだ。

Text by 山川 真智子