【イスラム国の教訓(4)】ISと対立するアルカイダの行方

Magharebia / Wikimedia Commons

 イスラム国(IS)による支配領域が崩壊して、今日のグローバルジハード・テロの動向は落ち着いた感がある。確かに、イラクとシリアにおける年間のテロ事件数は減少傾向にあり、おそらく今年はさらに減少することが予想される。

 しかし、それが絶対的なものか、一時的なものかは誰も予測できないだろう。少なくとも言えることは、ISやアルカイダという国際社会に脅威を与えてきたイスラム過激派組織の本体は組織的に弱体化したものの、依然としてその関連組織や過激思想は生き残っているということだ。特にISには世界の注目が集まるものの、9.11同時多発テロを実行したアルカイダについては、その動向がほとんど国内では聞かれない。今後、ISの陰に隠れるようになったアルカイダはどのような行方を辿っていくのだろうか。

◆依然として生き残るアルカイダの名
 9.11同時多発テロから既に17年、世界情勢は大きく変動している。テロ情勢も、アフガニスタン戦争やイラク戦争、オサマ・ビンラディンの殺害、イスラム国の台頭と衰退のように流動的に変化しており、9.11テロ時のアルカイダの姿は今日では見られない。世界の注目はどうしてもISに集まってしまうが、世界中に目を向けると、その関連組織は今でも健在だ。アラビア半島のアルカイダ(AQAP)、マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)、ソマリアのアルシャバーブ(Al Shabaab)、マリを中心にサハラ地域を拠点とするイスラムとムスリムの支援団(JNIM)、シリアのフッラース・ディン(Hurras al-Deen)など各地に存在する。

 幸いにも、これら組織が常時大規模で国際的なテロを実行できる能力を備えているわけではなく、その活動は地域的なものに留まっている。しかし、サイバー空間において、これらの組織は欧米や国際社会に対する攻撃を呼び掛ける声明を日々発信し続けている。近年でも、アルカイダの指導者であるアイマン・ザワヒリ容疑者、またオサマ・ビンラディンの息子であるハムザ・ビンラディン容疑者などは、欧米やイスラエルなどへの攻撃意思を示す声明を繰り返し発表し、アルカイダの関連組織はそれに同調する姿勢を崩していない。

Text by 和田大樹