【イスラム国の教訓(3)】支配領域を失ったISの脅威はなくなったのか?

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2.ISの影響や刺激を受ける個人
 また、組織だけでなく、ISが発信する動画やメッセージに影響を受け、自発単独的にテロを起こす個人の脅威は治まる気配がない。近年、ISの影響を受けた個人による車やナイフなど日常品を使ったテロ事件が、バルセロナやパリ、ロンドン、ブリュッセル、ストックホルムなど欧州各地で相次いだ。このような事件を起こす犯人の背景には、社会的差別や失業など社会・経済的な問題が深く根ざしており、それらが若者を過激なテロリストに変貌させる一要因になっている。

3. 逃亡し、再生を狙うIS戦闘員
 最後の懸念事項は、支配地域から上手く逃亡し、再生をねらうIS戦闘員たちである。現在、日本のメディアではほぼ取り上げられなくなったISの動向であるが、以前ほどの勢いはなくなっても、ISはイラクのモスルやキルクーク、西部アンバル県、そしてバグダッド周辺で小規模ながらもテロ活動を続けている。 イラク国内の宗派対立やシリア内戦が続く限り、ISが生き残れる土壌は残っており、今後再び情勢が緊迫するようなことがあれば、ISが組織を再生することも否定はできない。

 また、過激な思想を持ち続けて、母国ではない第三国に渡った戦闘員などの動向も気になるところだ。2017年5月から10月にかけてフィリピン南部・マラウィを占拠したIS系グループの中には、サウジアラビアやパキスタン、モロッコ、チェチェン、イエメン、インドなどの出身者が確認されている。こういった戦闘員が各地のIS関連組織と協力して、組織の再生を図るという懸念も存在する。

Text by 和田大樹