「新冷戦」の幕開け告げる、ロシア・中国の軍事演習「ボストーク18」 過去最大規模
◆中国軍にとっては海外遠征の絶好のシミュレーション
そして、極東地域での演習であるがゆえに、必然的にアメリカの東アジア最大の同盟国である日本も重要なターゲットとなる。そこへ、南シナ海問題や尖閣問題などで日米と軍事的に対立する中国が加わってきた。中国国防省によれば、3,200人の兵員と900の重火器、30機の固定翼機が「ボストーク18」に派遣されている。旧ソ連時代を含め、ロシアの総合的な大規模演習に旧ソ連以外の外国の軍隊が参加するのは初めてだ。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、両国の目的の一つは、武器システムと指揮系統の連携を図ることだとしている。ともに軍事力の拡大・近代化を急速に進めている中露が協力関係を誇示することにより、アメリカの極東地域の軍事的支配を牽制しようとする意図が見える。NATOは、近年の両国の軍事力拡大の流れが合流することに、強い危機感を表明した。
また、中国の習近平主席は、人民解放軍を海外遠征能力のある軍隊に育て上げようとしていると言われる。3,000人規模の部隊が国境を超える今回の演習は、そのシミュレーションのまたとない機会だ。8月30日に行われた中国国防省の定例記者会見では、「ボストーク18」に派遣される陸海空の部隊がどのように国境を超えてシベリアに入るか、スポークスマンが地図を使って説明した。
◆政治・経済の動きとも連動
演習が始まった同日、プーチン大統領は演習が行われている極東ロシアの中心都市、ウラジオストクで安倍首相、習近平主席とそれぞれ会談した。ゴールドスタイン教授は、ロシアの演習による軍事的圧力と外交戦略は密接にリンクしていると見る。特にまだ予断を許さない北朝鮮情勢を見据えたプーチン政権のしたたかな戦略が背景にあるという見方が強い。
また、中国は、ロシア北部沿岸の「北極海航路」を、独自の世界経済圏を作り上げる「一帯一路構想」の重要なピースに挙げている。ロシアも自国の経済的利益を見込んで中国による北極海航路開発に協力的な姿勢を見せており、ゴールドスタイン教授は、それを示す例として、中国がロシアの援助で砕氷船の開発に着手していることを挙げている。冷戦時代は対立関係にあった中露両国が、「新冷戦」を迎えて軍事的・政治的・経済的に急接近しているのは間違いないだろう。
ただし、ロシア国内では中国に対する警戒心も根強いようだ。「ボストーク18」も、友好関係の醸成と同時に、ロシアの強大な軍事力を見せつけることによる牽制も兼ねているという見方もある。対する日本は新型戦闘機の開発、日米同盟の強化などに取り組んでいるが、国境を接する2大パワーの動きには、一層の警戒が必要な情勢だ。
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