ベネズエラ難民問題、未曾有の事態に 暴力、衛生問題……対応に苦慮する周辺国
南米ベネズエラで続く深刻な経済危機により大量の難民が発生し、影響が近隣諸国にも波及している。国境を接するブラジル北部では、治安の悪化に怒った地元住民が難民キャンプを襲う事件が発生。これを受け、ブラジル政府は治安維持と難民保護を名目に、軍を出動させることを決めた。ペルーは、衛生状態が悪い難民から伝染病が広がることを懸念して、保健非常事態を宣言。国連関連機関も、2015年の欧州移民危機に匹敵する非常事態だと懸念を表明している。
◆難民対策に乗り出す近隣諸国
ブラジルのテメル大統領は、軍の派遣を認める法令にサインした後、「ベネズエラの問題は、もはや一国の国内政治の問題ではない。大陸全体の調和が危機に瀕している」と語った(BBC)。ブラジルメディアの報道によれば、8月18日、国境の町ロライマ州パカライマで、地元住民の一部が暴徒化し、難民キャンプを襲撃。テントに火をつけるなどしてキャンプが焼け、約1200人の難民がベネズエラ側に逆避難する事態となった。原因は、町の資産家が、ベネズエラ人のグループに強盗に入られたと訴えたことだった。
ロライマ州政府は、いったんは国境封鎖を決めたが、ブラジル最高裁は人道的見地からこれを覆した。ブラジル政府は、代わりに国軍を派遣して警備任務に就かせることを決定。テメル大統領は、「軍は自国民だけでなく、難民の安全を確保するために派遣する」と人道的立場を強調し、食糧支援や医薬品の支援も行う予定だとツイートした(CNN)。軍の派遣を認める法令は、8月29日から9月12日までの期限付きとなっている。
直接国境を接しないペルーにも、今年だけで30万人以上のベネズエラ難民が流入しているとされる。これまで、同国へはベネズエラ人はIDカードの提示だけで入国できたが、今月25日からはパスポートの提示が必要となった。ペルー政府が事実上国境を引き締めた形だ。また、UPIなどの報道によれば、ペルー当局は28日、健康状態の悪い難民から伝染病が広がることを恐れ、60日間の保健非常事態を宣言した。
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