米中貿易戦争の解決は「日本に学べ」 米中メディアが持ち出す80年代の日米貿易摩擦

Ronald Reagan Presidential Library / Wikimedia Commons

 米中貿易戦争はどこまでエスカレートするのか。アメリカが追加関税措置を発表すれば中国も米国製品に関税をかけるという報復合戦が続いている。このままでは世界を巻き込んで共倒れという最悪のシナリオも囁かれるなか、米中両国のメディアには「日本」という先例に学ぶべきだという論調が目立ち始めている。1980年代の日米貿易摩擦の教訓とは?

◆日本はプラザ合意で「経済的メルトダウン」の犠牲者に
 米中貿易戦争は、アメリカ側から見た貿易不均衡の是正の試みに端を発していると言えよう。トランプ大統領は、2016年の大統領選中から、膨らみ続ける対中貿易赤字を問題視してきた。その大きな要因は、国策として国有企業に補助金を出し、進出する外国企業に技術移転を強要するなど、中国が国際的なルールを無視した不公正な貿易を重ねているからだというのが米側の主張だ。

「これは、アメリカが1985年9月22日のプラザ合意で日本に送ったメッセージに似ている」と語るのは、米ロングアイランド大学大学院のパノス・モールドクータス教授だ(フォーブス誌)。ニューヨークのプラザホテルに集まった日米独仏英のG5蔵相・中央銀行総裁が交わしたプラザ合意は、日米貿易不均衡を解消するため、先進国が協調して実質的に円高ドル安を誘導するというものだった。

 その後も日本はしばらく経済発展を続けたものの、1990年をピークにバブルが崩壊。「失われた20年」とも呼ばれる長期的な景気後退期に入った。同時にアメリカの貿易は黒字に転じた。プラザ合意がこの流れにどれだけ影響を与えたかについては今日まで議論が続いているが、モールドクータス教授は、プラザ合意調印5ヶ国のなかで、日本が唯一の「経済的メルトダウンの犠牲者」となったとしている。

Text by 内村 浩介