日本のプルトニウム、米らが懸念する理由 中朝の“口実”に利用される?
◆「キャップ制」で米を説得できるか?
日本のプルトニウム貯蔵量がクローズアップされている背景の一つに、福島原発事故の影響で、国内の原発の多くが操業を停止している現状がある。使用される燃料が少ないため、貯蔵量が減るどころか、再処理を続ければ増えるばかりだという状況だ。
日米原子力協定の成立に尽力した元外交官の金子熊夫氏は、FTに米側からの条約破棄は「ありえない」と述べている。とはいえ、日本側から貯蔵量を減らすための一定のアクションがあることがその前提となろう。日本政府は、MOX燃料の使用量に合わせてプルトニウムを生産するキャップ制を検討していると報じられている。長崎大学核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎センター長は、これが実現すれば「日本の燃料リサイクル政策の大きな転換点となる」と述べている(FT)。
しかし、キャップ制では貯蔵量の増加を抑えることはできても、削減に結びつけるのは難しい。FTは、日本が青森県六ケ所村に新たな大規模な再処理施設を建設中であることに、疑念を呈している。同紙は、プルトニウム貯蔵量を削減する方針となれば、20年遅れで2021年に操業開始予定のこの計画が「棚上げ」になる可能性もあると指摘している。
◆北朝鮮や中国が絡む懸念も
国際情勢や各国の思惑も大きく絡んでいる。トム・カントリーマン元米国務次官補(核不拡散担当)は、北朝鮮が自身の核開発計画を守るため、日本のプルトニウム保有をやり玉に挙げる可能性があるとして、日本にプルトニウム貯蔵量の削減を求める発言をしている(UPI)。米政府内では、ポンペオ国務長官が非核化のタイムテーブルを話し合うため今月訪朝したのに合わせ、日本のプルトニウム問題も盛んに議論されているという。
また、一部の識者は、中国が日本式のプルトニウム再処理政策を推進し、軍事利用の隠れ蓑にする懸念も抱いている(AFP)。影響は欧州にも広がる。日本の47トンのプルトニウムのうち、10トンは国内の原発などに保管されているが、残り37トンは再処理委託先のイギリスとフランスにある。FTは、日本がプルトニウム削減政策に舵を切れば、これをイギリスに売却するかもしれないと指摘。「ポスト・ブレクジッドのイギリスにとって魅力的なオファーがあるかもしれない」と同紙は書く。
鈴木達治郎長崎大学核兵器廃絶研究センター長は、日本は使用済み核燃料を再利用するだけでなく、地中で処分する技術開発にも注力すべきだと警告する(FT)。核燃料のリサイクルを続けるか否かという根本的な議論を含め、日本のエネルギー政策が大きな岐路に立たされているのは間違いない。
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