イスラエルが安倍首相を怒らせた? 「靴入りチョコ」めぐり現地でひと騒ぎ

Abir Sultan / AP Photo

◆「靴を脱ぐ」文化はどのように報じられたか?
 このデザートに関し、「室内で靴を脱ぐという文化がある日本の首相に靴を出した」という点に批判の声がある。しかし、この日本の文化に対しては若干誤解されている面もあるようだ。

 例えば、エルサレム・ポスト(7日)は、日本での勤務経験のあるイスラエルの外交官の話として以下のようなコメントを紹介している。

「日本の文化で靴ほど低く見られるものはない。靴を履いて家の中に入らないだけではなく、職場でも靴を目にすることはない。首相や閣僚、議員すら靴を履いて仕事はしない(中略)。ユダヤ人の客人に豚の形をした皿でチョコレートを出すのと同じことだ」

 少し大げさに言ったのかもしれないが、かなり違和感を覚えるコメントだ。豚はユダヤ教で不浄の動物とされ、食べることがタブーとなっているそうだが、靴をそこまで汚い存在と考えている日本人は少ないのではないか。外国人も靴はある程度「汚い」ものと考えているし、どちらかと言うと、日本人は座ったり寝たりすることもある床を「きれいに保つもの」という意識が強いため、室内で靴を脱いでいるのではないかと感じる。

◆イスラエルとの関係は良好
 この騒動は、イスラエルだけでなく、アメリカやイギリスなど様々な国のメディアに取り上げられている。中には、「イスラエルが日本の首相を怒らせた」などと過激な見出しを掲げているものもある。

 日本の外交官が「ユーモアのつもりだとしたらおもしろいとは思わない。首相の代わりに気分が害されたと言うことができる」と話したとイスラエルメディアが報じたことが引用され、そうした報道となっている。

 しかし、安倍首相が実際に気分を害したのかどうかは分からないが、夕食会のデザートで外交関係がこじれることもないだろう。イスラエルと日本の二国間関係は、イスラエルが得意とするサイバーセキュリティー分野で関係を強化するなど良好な状態にあるようだ。

 イスラエルが日本を重視していることは、ネタニヤフ首相がフェイスブックに、報道の扱いが小さかったと文句を付けるビデオメッセージを投稿したことからもうかがえる。イスラエル紙ハアレツ(4日)によると、ネタニヤフ首相は「今週、世界第3位の経済を率いる日本の首相で、私の友人の安倍晋三氏が、イスラエルを訪問した。これに関して報道で何か聞いたか?」と不満をぶちまけたそうだ(メディア側は反論している)。

 ネタニヤフ首相とメディアとの対立に巻き込まれただけのような印象も受けるが、どういった形にせよ日本や日本の文化を気にかけてもらえるのはありがたいことなのかもしれない。

Text by 後藤万里