トランプ大統領の日本軽視、安倍首相の努力も……控える首脳会談

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 安倍首相はトランプ氏が大統領選に勝利した後、真っ先にニューヨークに駆け付け会談をした。昨年2月の訪米時には、大統領専用機でフロリダに向かい、一緒にゴルフを楽しむなど蜜月ぶりを強調。11月のトランプ大統領訪日でも関係を深め、日米関係は安泰かと思われた。しかし最近では北朝鮮問題で蚊帳の外におかれ、貿易では鉄鋼とアルミの関税除外国から外されるという冷遇に甘んじている。予想外の仕打ちに、安倍首相は出方を間違ったという意見が聞かれる。

◆疎外感に焦る日本。二人の友情は一方通行だった
 中国国営英字紙チャイナ・デイリーのアメリカ版は、トランプ氏勝利後、安倍首相はいち早く訪米し「信頼できる相手」とトランプ氏を讃え、以来ゴルフを潤滑剤に関係を深めようとしてきたと述べる。訪日の際にはトランプ氏を喜ばせ、「相性がいい」という言葉まで引き出したが、北朝鮮問題や関税措置でのトランプ氏の仕打ちからすれば、その言葉は必ずしも気に入られているということを意味するものではないと述べている。

 シンガポールのストレーツ・タイムズ紙も、ゴルフで築かれた日米両首脳の「ブロマンス(男同士の絆)」は薄れたとしている。安倍首相は4月17日から訪米し、トランプ大統領との首脳会談に挑むが、その理由は北朝鮮問題であっという間に道路脇に追いやられたことに危機感を持ったためと指摘する。また、アメリカの鉄鋼とアルミの関税除外リストから外れるという不名誉に、裏切られたと感じていることも原因だとしている。

◆予想できないトランプ氏の行動。安倍首相も後悔?
 そもそもヒラリー・クリントン氏勝利を予測していた安倍政権にとって、トランプ氏勝利は相当なショックだったと、政治誌ポリティコ欧州版に寄稿したジャーナリストのウィリアム・ペセク氏は述べる。しかし安倍首相は、切り替えていち早くトランプ氏を訪問した。日米同盟を保護し日本優遇を引き出すという意味で、日本研究者の間では高く評価されたと述べている。

 ところがその後、新大統領に賭けた安倍氏の勝算は日ごとに低くなっているように見えるとペセク氏は指摘し、安倍首相は世界のどの首脳よりも早く、そして温かくトランプ氏を受け入れたことを、今は後悔し始めていると述べている。

 誤算だったのは、トランプ氏がTPPからの脱退を表明し、関税措置などで貿易戦争をエスカレートさせていることだ。23年続いた強いドル政策をやめたことも、アベノミクスの見通しを暗くしていると述べる。また、振り子のように変わるトランプ氏の北朝鮮に対する態度にも日本は振り回されており、トランプ氏が最も親密なアジアの同盟国である日本を切って、実は中国に軸足を移すのではないかという不安も日本にはあるとしている。

◆対等な関係は無理?日本はアメリカ以外にも目を向けよ
 予定されている日米首脳会談での主要議題の一つは、北朝鮮問題と見られている。ストレーツ・タイムズ紙は、すっかり蚊帳の外におかれている日本としては、大陸間弾道ミサイルは放棄し、日本を狙える短距離、中距離ミサイルを維持させるという妥協をしないことをトランプ氏に確認するだろうとしている。また、解決策が示されれば、低下している支持率の回復につながる拉致問題も、正恩氏との会談で取り上げるよう求めるだろうと述べる。

 もう一つの課題である貿易に関しては、3月に発表された鉄鋼とアルミへの関税措置の免除を求めると見られるが、これと引き換えに日本が嫌がる2国間貿易協定の協議を求められる可能性があると同紙は述べる。神戸大学の政治学者、蓑原俊洋氏は、日本はトランプ大統領に最小の提供で挑もうとするが、トランプ大統領は最大を要求してくるだろうと述べ、アメリカの安全保障に頼る日本は強気に出られないだろうと同紙に話している。結局トランプ氏は安倍首相を対等には見ておらず、むしろ手下として見ているのではないかと述べている。

 一方ペセク氏は、安倍首相は日本に不公平な扱いをするアメリカに我慢することはないと述べる。アメリカの穴を埋めるためにTPPに新メンバーを入れて活力を与え、欧州や成長するアジア市場に軸足を移すこともできるとする。また、構造改革に集中することで日本の企業家精神に再び火をつけるよう、国内で一層の努力をすべきだとしている。

Text by 山川 真智子