アサドの無法、介入者たちの複雑な利害 混迷極めるシリア情勢

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 内戦が続くシリアで先週末、アサド政権側による反体制派拠点への化学兵器攻撃が行われた。これにより40人以上の市民が死亡したとされ、国際社会の非難が高まっている。エスカレートする内戦の背後では、アサド政権を支援するイランとその後ろ盾となっているロシア、イランと対立するイスラエル、親イスラエルのアメリカ・西側諸国といった各国の利害が複雑に絡む。トランプ大統領が軍事攻撃を示唆する一方で、欧米識者・メディアからは、混迷極めるシリア情勢に対し、「もはや静観するくらいしかできることはない」といったあきらめムードも出ている。

◆化学兵器攻撃に続いてイスラエルによる空爆も
 複数の報道によれば、今月7日から8日にかけ、反政府勢力「イスラム軍」が支配する首都ダマスカス近郊のドゥーマに、シリア政府軍とその後ろ盾のロシア軍による空爆が行われた。その際に化学兵器が投下され、40人以上の市民が窒息死し、500人以上が治療を受けているとされている。死者・負傷者の大半は子供と女性だという。

                                                                                                                 

 アメリカのトランプ大統領は、これを受け、シリアのアサド大統領を「アニマル」と非難。「大きな代償を払うことになる」と懲罰的な軍事攻撃を示唆し、現在重大な決断に向け、ホワイトハウス内で協議が行われていると報じられている。ドゥーマ攻撃前にはシリアからの米軍の撤退を宣言していたトランプ氏だが、事態が急展開する可能性もある。一方、ロシアは直接的な関与を否定しつつ、「アサド氏はシリアの合法的な大統領だ。(アニマルという)そのような口汚い言葉を大統領に浴びせるとは、全く受け入れがたい」と、プーチン大統領のスポークスマンが非難声明を出している(ニューヨーク・タイムズ紙=NYT)。

 週明け、混迷はさらにエスカレートした。化学兵器攻撃があった翌日の9日月曜日、今度はイスラエルがシリア中部の「T4」と呼ばれている空軍基地を空爆。アサド政権を支持するイランが建設した基地とされ、この空爆によりイランの軍事顧問4人を含む14人が死亡したと見られている。イスラエルは2月にもT4を攻撃しているが、その際の理由はイランが同基地からイスラエル領空にドローンを飛ばしたことだった。今回の攻撃では、そのイラン軍のドローン開発責任者が死亡したと伝えられている。また、2月の空爆ではイスラエル軍のF-16戦闘機1機がシリアの対空砲火によって撃墜されている。これは、この数10年間で初めてのイスラエル軍戦闘機の撃墜事例だという。今回のT4再攻撃はこれに対する報復の意味合いも強いようだ。

Text by 内村 浩介

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