平昌五輪放送で謝罪を繰り返した米NBC 現代ならではの落とし穴

Charlie Riedel / AP Photo

 2年に一度、驚異的な技術が我々に披露される。数キロメートルに及ぶケーブル、数百台のカメラ、プロデューサーたちは地球の裏側にどの映像を送るのか、コンマ数秒の内に判断を下す―そう、オリンピック中継だ。

 そのような中、今回の平昌オリンピック中継でNBCが直面した問題がいずれもシンプルな理由によるものだったのは皮肉なものである。マイクに向かう1人の人物と、それを批判する2000万の人々。韓国人やオランダ人、女性アスリートやスキーファンが侮辱と感じた失言・失策が続き、NBCはその謝罪・弁明に追われることとなった。

 生中継そのものや、生中継で起こりうるリスクが新しく変化したわけではない。変わったのはそれを取り巻く環境だ。

 アリゾナ州立大学の放送学教授であり、同校のスポーツプログラムを担当するブレット・カーランド氏は次のように語る。「昔のテレビの生中継は、その場限りのものでした。何か起きたとしても、それを目撃する人は目撃するし、見逃す人は見逃していたのです。それが今では、何か気に入らない発言があると、その場面をGIFに切り取ってインターネット上に公開する、ということができます。発言した当の本人が気付く間もない内に、Twitterが炎上するのです」

 氏はさらに言う。「元の行為は関係なく、ただスクリーンショットが人々に知られていくことになります」

 NBCが最初に抱えた問題は予期せぬところから生じたものだった。開会式中継で開催国に関する解説を担当したアジア関連専門家—ジョシュア・クーパー・ラモ氏の経歴は非の打ち所のないものであった。シカゴ大学出身、タイム誌の海外部門編集を務め、現在は元アメリカ国務長官ヘンリー・キッシンジャー氏のコンサルティング会社の最高経営責任者を務める人物だ。

 画面上に日本の安倍晋三首相の姿が現れると、ラモ氏は1910年から1945年にわたり日本が韓国を占領したことに触れ、次のように語った。「ですが、日本が文化・技術、また経済面において韓国自身の成長の重要な見本となってきた、ということはどの韓国人もが口を揃えて言うことでしょう」

 この発言が占領軍の行為に憤りを覚えている多くの韓国人の耳へと入り、多くの怒りを買うこととなった。NBCはすぐに謝罪、同局によると開会式以降の契約をそもそも交わしていなかったとのことであるが、ラモ氏はこれ以降同局の放送には登場していない。

 また、これまでのオリンピックと比較しても、NBCは開催国である韓国の文化について今のところあまり深く掘り下げてきていない。もっともこれには、ゴールデンタイムに各競技を生中継するためにスケジュールが過密になっているという要因も上げられる。

 この次に批判にさらされたのは、NBCが開会式に起用したケイティー・クーリック氏だった。NBCによる開会式中継はオランダではテレビ放送されていなかったが、氏の発言もまた、ソーシャルメディアを通じてすぐにオランダ人に知られることとなった。

 それは氏が、オランダが伝統的に見せるスピードスケートの強さについて話しているときのことであった。氏はその理由を、アムステルダムでは運河が凍る時期になると、スケートが重要な交通手段になり、人々が街をスケートで移動するからだと語った。この発言によって氏はオランダで嘲笑の対象となり、現在では運河が凍ることなどはめったになく、また移動も車で行う、という指摘が相次ぐこととなった。

 在米オランダ大使館のTwitterにまでコメントが寄せられる事態になり、クーリック氏は素直な謝意をツイート、自分はまるで「薄氷を踏んでいるかのよう」だとコメントした。

 NBCのスキー中継の放送席も粗さの目立つものだった。元世界王者のボディー・ミラー氏はNBCで初めてオリンピックの解説を担当したが、その解説はあまりにも技術面に寄った退屈なもので、視聴者も思わず眠気に誘われるものだった。

 しかし、真の問題が起こったのは、氏が不意にジェンダーロールについて発言したときであった。

 オーストリアのアナ・ファイト選手の成績不振について語る中で、コメンテーターのダン・ヒックス氏が膝の怪我の具合を理由に取り上げると、ミラー氏は別の理由を示唆、「これまでを振り返っても、結婚し、家庭を持った後でワールドカップのレースに臨むのは大変難しいことです」と結婚に原因があるかもしれない旨を述べたのだ。そして「夫婦を責めるつもりはありませんが、考え方によってはご主人のせいだと言えるかもしれません」と語ったのである。

 この発言を性差別主義的だと捉えた人々からすぐに反論が寄せられ、ミラー氏は1時間もしないうちに同放送内で謝罪を行った。ユーモアがうまく伝わらなかったのだと弁解したが、無表情で解説をする氏の姿は、とてもジョークを言おうとしていたと思えるものではなかった。

 また、このファイト選手はヒックス氏のひどい失態にも巻き込まれることとなった。スーパー大回転の競技途中、ファイト選手が1位の記録を残していた(同選手のオリンピックでの成績に結婚が悪影響を及ぼしていないことがこれではっきりするだろう)ところで、ヒックス氏はまだ競技が終了していないにもかかわらず同選手を金メダリストと確信してしまったのだ。

 ファイト選手に競り合うと見られていた選手が同選手の記録を越えることができなかった段階で、ヒックス氏はファイト選手の金メダル獲得を宣言、そしてNBCは中継をフィギュアスケートへと変更した。しかし、その後思わぬ伏兵チェコ共和国のエステル・レデツカ選手がファイト選手のタイムを上回り、金メダルを獲得する事態となったのだ。

 中継を切り替えたプロデューサーの決断は擁護のできるものであった。レデツカ選手や他の決勝出場選手に勝ち目があると思っていた者は実際誰もいなかった。ただ、ヒックス氏の確信には誤りがあったのである。翌日夜の放送で、実況陣はレデツカ氏の勝利がどれだけ予想外のものであったかを述べ事態を説明しようとしたが、その姿は説明責任を果たそうとするよりもただ言い訳をしているだけのもののように感じられた。

 それぞれの間に違いはあるが、公言した意外の理由がミラー氏に無い限りは、NBCが起した問題はどれも刺激や衝撃を過度に求めたために起こったというものではない。ミスを待ち構えている視聴者(苦情を言いたい人たちが使う#nbcfailというハッシュタグがあるのだから)の前で失言をしてしまった、というものなのだ。

 2週間にわたり、NBCのマイクの前に立つ者たちに寄せられる大衆の視線。断片化が進むメディア消費社会において、一度にこれだけの注目が向けられる様子はもはやほとんど見られない。この者たちは、冬季・夏季ともに次に開催されるまでの3年と50週の間はアメリカではほとんど関心の寄せられることのない一連の競技の大使なのである。

 それゆえに、オリンピック中継はまたとないチャンスであり、また同時に多くの落とし穴が潜むものでもあるのだ。

By DAVID BAUDER, AP Media Writer
Translated by So Suzuki

Text by AP