ギリシャとマケドニアが「マケドニア」をめぐって争う理由

Yorgos Karahalis / AP Photo

◆なぜ今なのか
 長年続いた保守派のニコラ・グルエフスキ首相率いる国家統一民主党政権が終わり、マケドニア政府に変化が訪れるとともに打開への期待が高まった。

 昨年6月にマケドニアの首相に就任した左派のゾラン・ザエフ氏は、周辺諸国との関係改善を図り、NATOおよびEU(欧州連合)加盟への可能性を強化するべく、大胆な策を講じてきた。

 ザエフ大統領は、ギリシャと国名論争を最重要課題として位置付けている。

 1月に入ってから、ギリシャ北部の都市テッサロニキで両国の外相が非公開協議を重ね、マケドニアの副首相兼欧州政策大臣ブヤル・オスマニ氏がギリシャを公式訪問した。公式訪問を終えたオスマニ副首相は、国名問題はいよいよ解決を見るだろうと楽観的な見解を示した。

「この長年にわたる論争のために両国の間に疲弊した空気が流れているのを感じます」と、オスマニ副首相はAP通信に語った。「信頼構築に向けて両国が大きく前進していることに意義があると私は考えます」

 一方ギリシャでも、副外相のヤニス・アマナティディス氏が希望的な見解を示した。

 1月17日にニューヨークで行われた予備協議を終えたニメッツ国連特使は、進展が見られるのであれば、6カ月以内にこの問題の解決が見込めるとの見解を示した。ジミー・カーター米大統領政権で国務次官を務めた現在78歳のニメッツ氏は、かつてはアメリカを、現在は国連を代表して、この問題の解決に20年以上取り組んできた。

 西側諸国もまた、この地域で高まっているロシアの影響力に対抗すべく、NATOの拡大にふたたび興味を示している。

◆協議再開も根強い反対の声
 国連の仲介による交渉が繰り返し試みられているが、この問題は解決を見ていない。マケドニアの新名称についてさまざまな意見が提案されているにもかかわらず。

 ギリシャ側は、「上」「北」「新」などの地理的な修飾語やほかの歴史的な修飾語を使った「複合名」を提案している。マケドニアは、「マケドニア新共和国」と「新マケドニア共和国」など、修飾語の位置について懸念を表明、形容詞の位置がマケドニア民族のアイデンティティを変えてしまいかねないと主張している。

 2008年、ギリシャは暫定名称でのマケドニアのNATO加盟に反対した。これを受け、マケドニアはギリシャを国際司法裁判所に提訴、ギリシャによるマケドニアのNATO加盟妨害は違法であるとの判決が下された。

 2005年、マケドニアはEU加盟候補国となった。しかし、正式加盟国であるギリシャがマケドニアの加盟を拒否できるため、国名問題が解決しない限りEUの一員となる見込みは低い。

「マケドニア」という言葉を含まない新名称を期待するのは現実的ではないと、先の協議の後でニメッツ国連特使は語った。

 両国の政府が合意点を見出したとして、合意を受け入れるよう自国の民族主義者を説得するという課題が待ち受けている。

 現政権が急進左派連合と少数政党の独立ギリシャ人との連立政権であるという事実が、ギリシャの立場を複雑にしている。独立ギリシャ人の党首を務めるパノス・カメノス国防相は、「マケドニア」という言葉を含む恒久的な名称の受け入れに反対を表明している。

 1月21日、抗議デモがギリシャのマケドニア地方の中心都市テッサロニキで抗議デモが行われた。

By KONSTANTIN TESTORIDES and ELENA BECATOROS, Skopje (AP)
Translated by Naoko Nozawa

Text by AP