巧みなイメージ戦、人々魅了した金与正氏 「北朝鮮のイヴァンカ」とも

Republic of Korea / flickr

◆「北朝鮮のイヴァンカ・トランプ」
 またワシントン・ポスト紙は、金与正氏が北朝鮮のソフトなイメージを担っていることをトランプ大統領の長女であるイヴァンカ・トランプ氏になぞらえて「『北朝鮮のイヴァンカ・トランプ』、オリンピックで韓国の人々を魅了する」と題した記事を掲載した。そして、女子アイスホッケー南北合同チームの応援に駆け付けた29歳の韓国人女性の「金与正氏は気難しい人と思っていたのですが、実際の彼女は絶えずほほえんでいたので、とてもいい印象を受けました」というコメントを紹介している。

 一方でビジネスインサイダー誌は、金与正氏に象徴されるほほえみ外交が覆い隠しているものに注意を向けさせる記事を掲載した。その記事では、金与正氏をイヴァンカ・トランプ氏になぞらえる風潮は、北朝鮮が非人道的な政権運営をしているという事実を見過ごしてしまう、という批判があるとしている。

◆ほほえみ外交のクライマックス
 金与正氏を迎え入れる立場であった韓国のメディアは、同氏の言動を融和ムードを高めるものとして報道している。例えば韓国の英字新聞社であるコリア・ヘラルド紙は、同氏が韓国大統領官邸を訪問した時の様子を詳しく報じている。それによれば、韓国大統領官邸を訪問した際、同氏はゲストブックに「平壌とソウルが朝鮮半島の人々のこころをひとつにまとめ、将来的には朝鮮半島が統一され、さらに繁栄することを願っています」と記帳した。

 韓国大統領府訪問時には、金与正氏は序列2位の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長とともに韓国・文大統領と記念撮影を行った。その記念撮影も巧みに融和ムードを演出したものであった。記念撮影の背景には、韓国の書道家シン・ユンボク氏の「相互理解」を題材とした作品が飾られていたのだが、作品に描かれた文字はちょうど朝鮮半島のかたちをしているのだ。同作品が朝鮮半島統一を願って制作されたものであり、大統領府の関係者によると、文大統領は記念撮影時にこの作品に込められた思いを二人に説明していた、ということだ。

Text by 吉本 幸記