CIAの中国スパイ網が崩壊、情報提供者が次々に消える 元CIA職員に疑惑

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◆決定的証拠はなし。CIAが取った策とは
 メディアの報道から、リーが中国に寝返ったスパイだという印象は深まるばかりだ。しかし、この事件を追ってきたNYTのアダム・ゴールドマン記者は、米公共放送PBSのインタビューに対し、リーがスパイだという証拠はないと述べる。

 ゴールドマン記者によれば、2012年にリーがアメリカに戻ってきたのは、彼を疑っていたCIAの策略だった。CIAはリーに秘密の仕事を持ちかけ、家族とともにアメリカにおびき寄せ、5回の面接を行った。しかしこの時リーに対しては、ノートを発見したことや、彼が中国のスパイだと疑われていることについては一切伝えなかったという(PBS)。

 その後CIAはリーを逮捕せず自由にさせるというギャンブルに出た。彼が知っていること、また彼と他の人々との関係について、より多くの情報を集めるためだったという。また、この時点で彼を起訴すれば、情報提供者が消されていることにFBIが気づいたことを、中国側に密告される恐れもあったと、ゴールドマン記者は説明している(PBS)。

◆突然の逮捕。謎は深まるばかり
 結局リーを泳がせて5年以上が経過したが、AXIOSは、2012年以来リーのスパイ容疑には進展は見られないとし、なぜ今逮捕されたのかは謎だとしている。また、スパイ容疑ではなく、それよりずっと軽い機密情報の違法所持で起訴されていることにも言及し、捜査当局がどの程度スパイだという確信を持っているのかは分からないとも述べている。

 事件は謎に包まれたままだが、中国国内の情報提供者を失ったことは、アメリカにとって一大事だとゴールドマン記者は指摘する。事件前までは順調だった諜報活動は、情報筋によると今ではほぼブラックアウト状態ということで、現代CIAの歴史における、諜報活動上の最悪の失敗だと同記者は述べている(SCMP)。

Text by 山川 真智子