CIAの中国スパイ網が崩壊、情報提供者が次々に消える 元CIA職員に疑惑

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 違法に機密情報を所持した理由で、元CIA職員のアメリカ人男性が逮捕された。実は近年、中国にいるCIAの情報提供者が次々と中国政府に特定され、処刑または収監される事態となっており、CIAはこの男性が関与したと見ている。アメリカのスパイ・ネットワーク崩壊に絡む大事件だけに、真相解明に注目が集まっている。

◆容疑者は香港在住。中国側と頻繁に接触か?
 中国のスパイと疑われているのは、中国系アメリカ人のジェリー・チュン・シン・リーで、この疑惑を最初に報道したのは、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)だ。その後各紙が後追いで報じており、ウェブメディア『AXIOS』は事件の流れをまとめている。それによると、リーは1994年にCIA入りし、外国人スパイのリクルートを担当していた。しかし2007年に自身のキャリアが頭打ちとなったことを不満に思い、離職したという。

                                                                                                                 

 CIAは2010年の終わりに、中国での情報提供者が次々といなくなっていることに気づく。2010年から2012年の間に、18~20人が処刑、または収監されていた。FBIとCIAは、なぜ情報源が中国側に漏れたのかを知るために捜査を開始し、2012年にアメリカに家族旅行で訪れていたリーのホテルの部屋を捜索する。ここでFBI捜査員は、中国の情報提供者とCIA職員の実名や連絡先、諜報活動のメモ、ミーティングの場所などが書かれた手書きのノートを発見した。しかしFBIは逮捕せず、2013年にリーは香港に戻った。ところが今年1月15日にリーは再び香港から帰国。ケネディ国際空港でFBIに逮捕され、翌日国家の防衛情報を不法に所持した疑いで起訴された。

 リーは香港でセキュリティ関係の仕事をしていたという。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)によれば、CIA退職後、2007年に日本たばこ産業の子会社、JTインターナショナルに勤務し、タバコの密輸と偽造の捜査を担当していた。

 当時の同僚は、リーが捜査チームに加わってから、捜査で入手した偽造品が中国当局に差し押さえられ、捜査員が中国側で逮捕されるなどの問題が起きるようになったとSCMPに語っている。会社側は、リーが詳細を中国当局にリークしているのではないかと疑ったが立証できず、2009年にリーとの契約を打ち切ることで関係を絶っている。

◆決定的証拠はなし。CIAが取った策とは
 メディアの報道から、リーが中国に寝返ったスパイだという印象は深まるばかりだ。しかし、この事件を追ってきたNYTのアダム・ゴールドマン記者は、米公共放送PBSのインタビューに対し、リーがスパイだという証拠はないと述べる。

 ゴールドマン記者によれば、2012年にリーがアメリカに戻ってきたのは、彼を疑っていたCIAの策略だった。CIAはリーに秘密の仕事を持ちかけ、家族とともにアメリカにおびき寄せ、5回の面接を行った。しかしこの時リーに対しては、ノートを発見したことや、彼が中国のスパイだと疑われていることについては一切伝えなかったという(PBS)。

 その後CIAはリーを逮捕せず自由にさせるというギャンブルに出た。彼が知っていること、また彼と他の人々との関係について、より多くの情報を集めるためだったという。また、この時点で彼を起訴すれば、情報提供者が消されていることにFBIが気づいたことを、中国側に密告される恐れもあったと、ゴールドマン記者は説明している(PBS)。

◆突然の逮捕。謎は深まるばかり
 結局リーを泳がせて5年以上が経過したが、AXIOSは、2012年以来リーのスパイ容疑には進展は見られないとし、なぜ今逮捕されたのかは謎だとしている。また、スパイ容疑ではなく、それよりずっと軽い機密情報の違法所持で起訴されていることにも言及し、捜査当局がどの程度スパイだという確信を持っているのかは分からないとも述べている。

 事件は謎に包まれたままだが、中国国内の情報提供者を失ったことは、アメリカにとって一大事だとゴールドマン記者は指摘する。事件前までは順調だった諜報活動は、情報筋によると今ではほぼブラックアウト状態ということで、現代CIAの歴史における、諜報活動上の最悪の失敗だと同記者は述べている(SCMP)。

Text by 山川 真智子

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