中朝国境の元密輸業者が語った密輸の実態 「良い日は40万円以上稼いだ」

Ng Han Guan / AP Photo

 870マイル(約1,400キロメートル)に渡る国境は、北朝鮮の経済の要となっており、そこで行われる貿易の約90%が中国とのものだ。国際社会はここ10年間に渡り、北朝鮮に対する貿易制裁を実施しているが、中国政府はというと、北朝鮮による度重なる兵器実験を受け、昨年になってやっと制裁の大幅強化に着手した。これにより対北貿易は減少したが、現在も一定量の密輸品が国境を越えて運ばれており、それを促進しているのが北・中両国の賄賂のやり取りや、政治家の働きかけだとアナリストらは指摘する。

 制裁が強化されても、貿易の仕組みが高度化しただけである。

 ハーバード大学ケネディスクールの北朝鮮ワーキンググループ長を務めるジョン・パーク氏は、少数の中国企業が、制裁が厳しさを増す中において北朝鮮企業の代理人として活動することで、いかにして国境を支配したのか調査を実施し、「痛手を負ったのは、小規模な取引業者だ」と言う。「しかし北朝鮮にクライアントを抱える大企業にとっては好機となる」。

 北朝鮮による石炭の輸出が禁止された時、石炭の一部は北朝鮮産であることを隠すために、ロシアを経由して運ばれた。また北朝鮮企業は、他国からの撤退を余儀なくされれば、ダミー会社を設立するか、中国人ブローカーを雇った。また北朝鮮製の洋服に買い手が見つからない時には、工場で「Made in China」のラベルを付けるようになったとも言われている。

 この歪んだグローバリゼーションが国境付近にも影響を及ぼし、昔ながらの密輸業者の中には、この流れについて行けなかった者も多い。

「昔は稼ぎが良かった」と、先程とは別の元密輸業者は語った。しゃがれ声の、40代の中国人男性は現在、韓国で臨時職員として働いている。「しかし今は、そうはいかない」。

Text by AP