「ソ連時代以上」プーチン・ロシア、中東で影響力拡大 シリアでミッション達成

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 プーチン大統領は11日、中東の3ヶ国を歴訪した。中東との結びつきを強め、影響力を増すロシアについて、シリア介入での実質的勝利が大きな転換点になったと海外メディアは見ている。また、調停者であったアメリカが中東から距離を置く姿勢を示していることも、ロシアに権力拡大の機会を与えているようだ。

◆不利の下馬評を覆したシリア介入
 2015年9月にロシアはシリア内戦への介入を開始した。ロシアは7日、「イスラム国」(IS)とシリア反乱軍に対して勝利宣言を行ったが、AP通信によると、介入開始当初は、軍事的関与は無謀との見方が大勢を占めていた。理由は2点ある。

 第1に、シリアのアサド政権は決定的に不利な状況にあった。IS、アルカイダ、その他の反乱軍を前に、政権側の軍隊は総崩れであった。

 第2に、ロシア軍の装備はソ連時代からの旧式品であり、武力が期待できなかった。しかしイスラエルのハアレツ紙は、実際には近代的な装備が投入され、長期かつ大規模にわたる配備への不安を一掃したとしている。

 結果としてロシアはシリア内戦の事実上の鎮圧に成功した。BBCによると、オバマ大統領はロシアが泥沼に陥ると予測。ロシア国民の間にも、ソ連時代の大失敗になぞらえ「第2のアフガン」になるとの危機感があった。実際には、シリアでISを打ち破り、ロシアは目的を達成することとなった。

◆介入の動機:本音と建前
 危険を冒してまで介入した動機について、「国際的テロリズムとの戦い」がロシア公式の介入目的である(BBC)。しかし、中東のハアレツ紙(12月11日)は、「(プーチン氏は)シリアを再建しておらず、その意思もない」と断じる。イラクとアフガニスタンへの援助に巨額を投じたアメリカとの姿勢の違いが鮮明だとする。

 同紙では、ロシアの真の狙いは同盟国の維持にあると見ている。シリアのアサド政権を擁護することで、同国にある地中海の軍事拠点を維持できるとの狙いだ。この点についてはBBCも、ロシアがシリア北西部に2つの軍事基地を有していることを伝えている。さらにAPによると、ソ連時代に補給基地として使用していた基地を大規模な海軍基地に転換する計画があるようだ。IS掃討という大義の下に行われた介入だが、中東での軍事力を確保するという真の狙いが窺える。

◆アメリカ不在で勢力拡大
 中東での影響力を増すロシアだが、アメリカの関与が弱まった隙を突いたとの見方も広がっている。APでは、オバマ政権時代にアメリカがシリアへの介入を中断したことを振り返る。さらに現在、トランプ政権の下、アメリカ第一主義による内向き志向が続いている。

 この点についてハアレツ紙は「ロシアのためにオバマがドアを開き、そして今、ドナルド・トランプ大統領が大きく開け続けている」と例える。中東におけるアメリカの不在が、ロシアの勢力拡大のきっかけとなっていることは間違いない。

 さらにBBCは、直近のエルサレムの首都認定問題により、地域の調停者としてのアメリカの地位が揺らぎつつあることを指摘する。

 対するロシアは、シリア情勢以外にも積極姿勢が目立つ。APは、イラン、サウジアラビア、トルコ、イスラエルと関係を深めており、冷戦時代のソ連にも勝る影響力を中東で誇ると評価する。対エジプトでは原子力発電所の建設プロジェクトに署名し、経済政策にも抜かりがない。武器購入国であるエジブトとのパイプを強固にする狙いもあるという。

 さらにBBCによると、エジプトとの基地使用権の交渉を予定しているほか、トルコへのミサイル輸出交渉や、サウジアラビアとの関係改善など多面的な外交を展開している。

 アメリカの存在感が薄らぐ中、中東におけるロシアの存在感が一段と増している様子だ。

Text by 青葉やまと