「日本に自主防衛させるとき」米識者に広がる“再軍備”支持 「北脅威の今こそ」

akiyoko / Shutterstock.com

◆牙を抜かれた世界第4位の軍隊
 想定される北朝鮮有事の際の自衛隊の役割を分析したUSAトゥデイ紙の記事は、日本の純粋な軍事力は、アメリカ、中国、ロシアに次ぐ世界第4位(クレディ・スイス研究所調べ)だと紹介する。軍事予算規模では第7位で、数字上は立派な軍事大国というわけだ。しかし、ポンフレ氏は、自衛隊は「牙の抜かれた軍隊」だと表現する。世界有数の装備や人員を持ちながら、その曖昧な立ち位置のせいで宝の持ち腐れになっているというわけだ。

 同氏は、日本国民自身の自衛隊への信頼も低いと、次にように書く。「1960年代のゴジラ映画では、自衛隊は常に暴れるゴジラから逃げ回る無能な田舎者のように描かれた。自衛隊は完全志願制だが、そこに志願して参加した者はいまだに見下され、賃金は低い」。日本特有のこうした軍隊観は、日本が平和な地域に位置しているのなら大きな問題にはならないが、「北東アジアは地球上で最も危険な地域の一つだ」と同氏は警告する。

 とはいえ、自衛隊を名実共に世界有数の強力な軍隊に仕立て上げ、完全な自主防衛を目指すのは現実的とは言えないだろう。元レーガン大統領特別補佐官のドン・バンドウ氏は、ナショナル・インタレスト誌のコラムで、政策研究大学院大学・道下徳成教授の「防衛とはリスクヘッジだ。もし、完璧な防衛を目指すということなら、コストは莫大なものとなる」という見解を紹介している。

◆今の日米同盟はアメリカによる“福祉事業”?
 ポンフレ元WP北京支局長は、「アジアの緊張が高まる中、日本は自身のため、そしてアメリカの友人のためにもっとできることをしなければならない」と、日本が密接な日米同盟を維持しながら軍事的役割を拡大することを求める。

 一方、バンドウ氏はさらに強く日本に自主防衛を促している。「日本は、自国の防衛を(アメリカから)引き継ぐべきだ。アメリカも、その核の傘を見直す必要がある。ワシントンは既に東京を守るためにロサンゼルスをリスクにさらしている」と、日本の核武装の可能性にも言及。さらに同氏は、アメリカに責任が偏重している今の日米同盟は本来の「防衛」という目的を見失い、「福祉」になってしまっていると書く。安保条約は「他の国ではなくアメリカを守るためのものでなくてはならない」とし、「アメリカはもう、他の国が自分でできることをしてあげるべきではない」と主張する。

 日本が自主防衛に舵を切れば、「アメリカは日本政府に何をすべきか教える必要がなくなる」と同時に、日本は「アメリカを満足させるためではなく、自国の利益のために防衛と外交の決定を下すことができる」と同氏は書く。そして、北朝鮮と中国の脅威が迫る今こそが“アメリカ離れ”のタイミングだという。こうした主張を、当の我々日本人はどのように受け止めるべきだろうか?

Text by 内村 浩介