「日本に自主防衛させるとき」米識者に広がる“再軍備”支持 「北脅威の今こそ」

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 中国と北朝鮮の脅威が高まり、米トランプ大統領が「アメリカ・ファースト」を掲げる中、米識者の間で日本に自主防衛を求める声が高まっているようだ。ここに来て複数のメディアが、「日本に普通の防衛力を持たせるときが来た」(ナショナル・インタレスト誌)といった、日本の“再軍備”を支持する論調を掲載している。

◆自衛隊のままでは陸海空の連携が取れない
 トランプ大統領は先のアジア歴訪を前に、中国に対して、北朝鮮に核・ミサイル開発をやめさせるようもっと圧力をかけなければ、「武士の国」である日本との間に「大きな問題を直接抱えることになるだろう」と警告した。識者らはこれを、日本の再軍備(自衛隊の軍隊化)を認めることをほのめかした発言だと受け止めている。

 これに対し、ワシントン・ポスト紙(WP)元北京支局長のジョン・ポンフレ氏は、「日本人は元来の『武士』なのだろうか? 日出ずる国が再び軍国主義に染まろうとしているのだろうか? いずれの答えもノーだ」と、極端な変化が起きつつあるという見方を牽制する。同氏は、「日本の政治家が軍隊の再生を主張するたびに、軍国主義者、ファシスト、あるいは第二次大戦中の戦争犯罪の否定論者だと激しく批判されてきた」とも言い、日本国内の野党や左派メディアが懸念するような軍国主義の復活などはありえないと主張する。ただし、より現実的な見地から、安全保障上のアメリカへの「病的な依存」は、北東アジア情勢が緊迫度を増す中で早急に改善されるべきだと考えているようだ。

 そのための第一歩は、憲法改正を経て自衛隊という中途半端な存在をワールド・スタンダードな「軍隊」に再構成することだ。ポンフレ氏は特に、自衛隊の陸海空の共同作戦遂行能力の欠如を問題視する。同氏は自衛隊の現状を「今現在の陸海空軍は、ほとんど足並みを揃えて行動することができない。反対にいがみ合う領主のようにふるまっている。彼らは互いに話す無線機すら持っていない」と表現。実際、東日本大震災の際には海上自衛隊と陸上自衛隊の連携が取れなかったために、沿岸に取り残された人々の救助は米軍に任せきりだったとしている。行動に制約の少ない“軍隊”に格上げしなければ、戦時下はおろか災害救助においても能力を発揮できないという見方だ。

Text by 内村 浩介