ロシアのツイッター工作明らかに トランプ氏に都合の悪いニュースを歪める

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【サンフランシスコ・AP通信】 後に削除されたアカウントに関するAP通信の解析によると、ツイッター上で偽装したロシアのエージェントは、昨年のアメリカ大統領選挙の直前、主流メディアとヒラリー・クリントン氏の選挙運動に対する批判に焦点を再び合わせようと躍起になっている間に、大急ぎでドナルド・トランプ大統領のスキャンダルへの衆目を逸らそうとした。

 ”America_1st_”や”BatonRougeVoice”など、背後にロシアの影がちらつくアカウントが2016年10月7日に投稿したツイートは、ビデオに録音されたトランプ氏の女性に対する破廉恥な行為や女性蔑視と取れる下品なコメントについてのニュースから積極的に人々の注意を逸らそうとした。その代わりに、クリントン氏の選挙対策委員長、ジョン・ポデスタ氏がハッキングを受けて外部に漏えいした不利な電子メールのことを大げさに取り上げようとした。

 今年の初頭以来、アメリカ大統領選挙におけるトランプ氏の支持とクリントン氏への攻撃へのロシアの介入の大きさが、アメリカ議会による詳細な調査および特別検察顧問であるロバート・ミューラー氏による刑事捜査の両方の対象となっている。これらの調査は、特にトランプ氏の選挙運動とロシアの人々の共謀の可能性の有無を精査している。

 AP通信の解析は、ロシアによるサイバー干渉の背後にある露骨な戦略を白日の下に晒した。トランプ氏にまつわるネガティブなニュースに対する人々の注目に迅速に反応し、事実を歪めてその注目を逸らそうとする戦略だ。

 AP通信は、先週、ツイッターと議会調査官が共有したロシアの382のアカウントが2015年8月31日から2016年11月10日までに投稿した36,210のツイートを調べた。ツイッターはそれらのアカウントを停止し、ツイートを削除し、インターネット上からアクセスできないようにした。しかし、AP通信が入手したアーカイブとハンドルネームを一致させることで、それらのアカウントがツイッター上で行ったアクティビティの一部を限定的に検索し、読み出すことに成功した。

「MSM(主要なメディア)は、トランプ氏とビリー・ブッシュ氏との会話の録音のことをまたもあれこれ言っているが、どのようにヒラリー氏がレイプ犯を擁護し、後でレイプ被害者を冷笑したのかをアメリカ全国民に伝えてみてはどうだろう?」 America_1stアカウントはこのようにツイートしていたが、アーカイブのメタデータによると、America_1stアカウントにはピーク時で25,045名ものフォロワーがいた。このツイートは10月7日の午後に投稿されたもので、トランプ氏とブッシュ氏が卑猥な談笑に興じているビデオコメントをワシントン・ポスト紙が入手し、いち早く報じた数時間後のことだ。トランプ氏はビデオの中で、芸能ニュース番組「アクセス・ハリウッド」の司会者、ブッシュ氏に、ある女性にキスを試みたり、みだらな行為を仕掛けてこの女性とセックスしようとしたと語り、「スターなら、女性に何でもできるのさ」とうそぶいたりした。

 ワシントン・ポスト紙がこの特ダネを報じた後、一時間以内に、ウィキリークスはポデスタ氏のアカウントから漏えいした電子メールに関する爆弾報道を行った。実はロシアのアカウントはその数日前から、この件についての報道が行われることをほのめかしていた。

「ウィキリークスのアサンジ氏がアメリカ大統領選挙の前に文書を公開する兆候がある」と、10月4日に「SpecialAffair」と「ScreamyMonkey」が一秒と違わず相次いでツイートした。「SpecialAffair」は、自らを「行動する政治マニア」と称するアカウントであり、当時、11,255人のフォロワーがいた。「ScreamyMonkey」は、自称「先陣を切るフロンティア、特ダネ収集者」というアカウントであり、フォロワーの数は13,224人だった。両アカウントとも2014年12月後半の3日間に相次いで作成されたものだ。

 ツイッターは、ソーシャルメディア界の巨人であるフェイスブックが10月31日と11月1日にキャピトル・ヒルの連邦議事会の公聴会に出席したのよりも先に、2,752のアカウントのハンドルを議会捜査官に提出したが、これらはロシアの「インターネット・リサーチ・エージェンシー」から入手し、確認のとれたものだった。ツイートの9%は大統領選挙関連のものであったとのことだが、ツイート自体は公にされなかった。

 こうして、AP通信が入手したアーカイブは、2016年11月8日の投票日に向けて急激に高まったツイッター上でのロシアの活動について、これまでで最も包括的で歴史的な写実的記録となった。ツイッターのポリシーは、法に触れたりツイッターが例外として認めたりしない限り、資料をアーカイブした開発者は可及的速やかに停止されたアカウントからツイートを削除するように求めている。AP通信が入手したアーカイブ内に削除されたツイートが残存していることは、これらのルールに抵触する可能性がある。

 ロシアのアカウントは、選挙戦の最後の瞬間に素早く行動を起こすだけではなかった。選挙運動の初期段階においても同様に活動していた。

9月17日、トランプ氏がバラク・オバマ前大統領の出生地についての嘘を突然翻し、さらに、『オバマ前大統領は「アメリカ生まれだ。以上」』と宣言した時、いくつかのロシアのアカウントは、トランプ氏が続けて言い放った「オバマ前大統領の出生地問題を持ち出したのはクリントン氏だ」という見当外れの主張にも同意し、そのまま繰り返すようにリツイートした。

 他のアカウントは、この出生地問題を話題にし続けた。ロシアのアカウントであるTEN_GOPをテネシー州共和党の公式アカウントと間違えている人は多いが、TEN_GOPは、オバマ前大統領が「ケニア生まれだと認めている」と主張するビデオにリンクを張っている。しかし、ロシアのアカウントは足並みが揃っていたわけではない。ハンドル名「hyddrox」は、反トランプ派の億万長者、マーク・キューバン氏の「MSM(主要なメディア)はこれまで騙されて出生地問題を追いかけさせられてきたのだ」という投稿をリツイートした。

 肺炎と診断されたクリントン氏は、9/11に行われた同時多発テロ事件の追悼式典を途中退席し、その後、9月15日に選挙戦に復帰した。ロシアのアカウントである「Pamela_Moore13」は、彼女のオープニング曲が歌手ジェームズ・ブラウンの「I Feel Good」だった、と指摘し、「ジェームズ・ブラウンは肺炎で死亡した」と、たった一行の意見を述べたが、このツイートは、当時59,868人のフォロワーを抱えていた「Jenn_Abrams」を含むロシアのアカウント達によって少なくとも11回リツイートされた。

 複数の追悼記事によると、ジェームズ・ブラウン氏は、肺炎に関連したうっ血性心不全で死亡した、とされる。

 SNSで荒らしを行うロシアのアカウントがアメリカ大統領選挙の前後数カ月にFacebookで購入していた多くの広告がそうだったように、人種差別も顕著にツイートとして現れた。ロシアのアカウントの1つである「Blacks4DTrump」は、9月16日にトランプ氏の発言、「奴隷制に賛成とする党、ジム・クロウ法を支持する党、それが野党、民主党だ」を引用してツイートした。

 一方、TEN_GOPは、「アフリカ系アメリカ人ならドナルド・トランプ氏に一票を投じるべき理由を説いている黒人牧師のメッセージを広く流布するよう」フォロワーたちに強く求めた。

By RYAN NAKASHIMA and BARBARA ORTUTAY
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP