「中国の台頭が人権を脅かす」香港民主運動家、黄之鋒氏インタビュー

Kin Cheung / AP Photo

【香港・AP通信】 香港の若手民主運動家、黄之鋒(Joshua Wong)氏(21)は今月1日、中国の台頭の結果、利益優先の裏返しで人権侵害のリスクが世界中で高まっていると警告した。これは、ドナルド・トランプ大統領による中国などアジア四か国の歴訪に対する展望を聞かれた際の発言である。

 香港で最も有名な民主活動家となった黄氏は、2014年の大規模民主化デモに関与した罪で禁錮刑を受けたあと、現在上訴中で保釈されている。

「企業の利益が人権より優先されている」とAP通信のインタビューで黄氏は答えた。中国が台頭する中で、「残念ながら世界中で共通するトレンドのようだ」と彼は述べた。

 黄氏は、トランプ大統領のアジア歴訪について「先行きは不透明だ。大統領がツィッターで突然何を言い出すか、誰も予測できない」と述べた。しかし、トランプ大統領が商業を優先して人権を軽視してはならないと主張し、アメリカの実業界の利益が中国の台頭により直接損なわれる日が来るだろうとも示唆した。

 一例として、黄氏はイギリスの人権活動家ベネディクト・ロジャーズ氏が香港入国を拒否された事例を挙げ、このような事態が再び生じるだろうと述べた。大方の見方では、今回の香港入管の措置は北京側の要請によるものとされている。

「アメリカの政治家が香港入国を拒否される日が来るかもしれない。アメリカの政治家やビジネスパーソンが国際金融センターにアクセスできなくなるかもしれないのに、アメリカは香港の自治が脅かされるのを傍観してよいわけがない」と黄氏は述べた。

 1997年に香港がイギリスから中国に返還された際に、北京政府は「一国二制度」構想に基づき香港に広く自治を認めることを約束したが、民主運動家や政治家は、中国共産党指導部が約束を反故にしつつあるのではないかと恐れている。

 黄氏はアメリカをはじめ欧米諸国に、「アジア太平洋の安定を脅かす中国模式(中国モデル)」を引き続き注視するよう促した。中国模式とは、民主主義改革を伴わない経済成長を意味する。2012年に香港政府が「道徳・国民教育科」の一環として、中国一党支配を称揚する教科書を配ろうとして物議を醸したが、その書名もやはり「中国模式」だった。黄氏は、計画の撤回を政府に求める抗議運動を支援した。

 黄氏は、禁固6か月の実刑判決を受けて2か月間収監されたあと、10月24日に釈放された。香港司法当局が下した一審判決に対し量刑が軽いとして司法長官が上訴し、黄氏は羅冠聡氏(Nathan Law)とともに収監されていた。一連の動きは香港司法制度の独立が揺らいだ証であるとして、国内の懸念が高まっていた。両名は11月7日に出廷して上訴する。

 黄氏は別件でも判決を待っているが、すでに刑務所に戻る覚悟を決めている。収監中に21歳となった黄氏は、「監獄で誕生日を祝うのは、これが最後ではないかもしれない」と述べた。

 刑務所では毎日30分の行進練習を強いられ、食事はスプーンで取る。フォークやナイフ、箸は禁止である。

 電話も禁止されているため、多くのフォロアーがいる自身のSNSアカウントを更新できなかったが、ネットから隔離されることで、「スピリチュアルな内省」の時間を得ることができたという。刑務所内でのニュース閲覧は地元発行の親北京派刊行物に限られていたが、20歳のパキスタン活動家、マララ・ユスフザイの「私はマララ」などの本を読破した。

 保釈中の黄氏は、両親や恋人とともに楽しんだり、ゲームをしたり、香港式ミルクティーなどの好物のローカルフードを食べたりして過ごしている。

 黄氏は、香港に民主主義が完全に根づくまで戦い続けるつもりだ。短期的には、自身の政党「香港衆志」が早ければ11月初旬にも、半民主制度下における来年の中間選挙に出馬する候補者を発表する、と黄氏は述べた。政府の上訴による実刑判決で羅冠聡氏が被選挙権を喪失したことに伴う措置である。

長期的には、香港人が「心構えを改め」て北京の締付けに抗えるようにするために、やるべきことは山積していると黄氏は付け加えた。

「香港人は、中国が設置した監獄の中にいるようなものだが、それでも私たちは困難を克服できると信じている」。

By KELVIN CHAN and YI-LING LIU
Translated by平湊音

Text by AP